【島人の目】伊総選挙 欧州未来の写し絵


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 先月28日、イタリアのマタレッラ大統領は議会を解散し、ことし3月4日に総選挙が行われることになった。以来、街宣車ががなり立てる野蛮な光景はないものの、選挙運動がすさまじい。

 世論調査では欧州連合(EU)懐疑派のポピュリズム政党「五つ星運動」がトップの支持率を維持しており、どこまで彼らの勢いが伸びるのかが注目されている。また極右政党の「北部同盟」もベルルスコーニ元首相が主導する右派連合内で強い勢力を保っている。

 昨年、欧州ではオランダ、フランス、ドイツなどで重要な選挙が相次いで行われ、極右政党の台頭が顕著になった。フランス大統領選では極右のルペン候補が決戦投票まで進出し、ドイツの総選挙では反移民・反イスラムの極右政党「ドイツのための選択肢」が大きく支持を伸ばした。

 ドイツではナチズムの跋扈(ばっこ)を許した過去と第2次大戦への多大な責任感から、極右勢力へのアレルギーが強く議会では彼らは1席も確保できずにいた。ところが極右政党は突如として94議席を獲得。第3党に躍り出て世界を驚かせた。

 欧州で極右政党やポピュリズム政党が強い力を維持し、あまつさえそれを拡大しようとしているのは、英国のEU離脱やアメリカの大統領選で猛威を振るった排外ナショナリズムやポピュリズムのうねりの一環である。

 その大きな流れの中で勢力を伸ばしているのが、トランプ大統領の誕生時に「彼に続け」と党首が叫んだ「五つ星運動」であり、同じくトランプ主義を信奉する「北部同盟」である。極右の「北部同盟」と「イタリアの同胞」は、中道右派のベルルスコーニ氏と提携して政権入りさえ果たしそうな勢い。イタリアの総選挙の行方を欧州各国は注意深く見守っている。
 (仲宗根雅則 イタリア在、TVディレクター)