【島人の目】ミュージックシティー


社会
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 テネシー州の州都ナッシュビルを先日、訪れた。ナッシュビルは、カントリーミュージックをはじめブルーグラス、ロック、ブルースなどの音楽の「聖地」といわれている。

 ナッシュビル空港に到着すると、ミュージシャンたちが生の演奏で迎えてくれる。街には100軒以上のライブハウスがあるといわれる。ライブハウスが軒を連ねるブロードウェイ通りからは朝から深夜まで音楽が鳴り響き、地元民や観光客でにぎわっている。

 エンターテインメントも充実している。毎週土曜夜のカントリー・ミュージックの公開ライブ放送のラジオ番組「グランド・オール・オープリー」は、1925年から続く長寿番組だ。同番組の最も有名な会場として知られるライマン公会堂では、チャップリンやエルビス・プレスリー、ジョニー・キャッシュらのコンサートがかつて開かれ、今でも数々のショーが見られる。

 カントリーミュージック殿堂博物館は、カントリーの歴史が網羅され、ファンでなくとも見応えがある。プレスリーのテレビ、電話付きの愛車キャデラック、ゴールドのピアノが展示され、さらに往年のスターたちの衣装や楽器もあり、その変遷もよく分かる。展示物の多さに感心した。中心地から少し離れた所にある「RCAスタジオB」では、プレスリーやドリー・バートン、ビーチ・ボーイズなどの大御所をはじめ多くの歌手の楽曲が録音された。その数、250以上といわれる。スタジオは一見何の変哲もない小さな平屋だが、ガイドが説明する歴史やスターたちの逸話は面白く、音響の良さに感動し、聞きほれてしまった。

 国内外から多くの観光客が訪れ、音楽と触れるためのエンターテインメント満載のナッシュビルの街。毎年、当地へ行くたびに、「音楽のまち」を目指す沖縄市の現況と比較してしまう。民謡、ロック、ジャズ、ポップスとジャンルを問わずたくさんのアーティストが「コザの町」から生まれた。充実しているのになぜ、育たないのか、ナッシュビルの町を散策しながら考えてしまった。

(鈴木多美子、バージニア通信員)