普天間停止期限まで1年、実現見通せず 政府、作業遅れを知事に責任転嫁 


この記事を書いた人 Avatar photo 与那嶺 明彦
補修工事が相次いでいる米軍普天間飛行場=2017年8月、沖縄県宜野湾市

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の「5年以内運用停止」の期限となる2019年2月18日まで残り1年となった。政府は翁長雄志知事の政治姿勢を理由に「状況が変化」(小野寺五典防衛相)しているとして5年以内の運用停止を困難視する。だが、その根拠となる具体的な理由は示せていない。「運用停止」自体の定義もあいまいなまま、政府は無為無策で県知事に責任転嫁する状態が続いている。

 「5年以内運用停止」は、沖縄県の仲井真弘多前知事が2013年12月、沖縄政策協議会で安倍晋三首相に要請した。仲井真氏が辺野古の埋め立てを承認する事実上の前提条件の一つだった。安倍首相も「最大限実現するよう努力したい」と受け入れた。仲井真氏は当時、新基地建設には最短でも10年程度見込まれるとして、工事の進展とは切り離して、運用停止を実現すべきだとの認識を示していた。

 14年4月には普天間飛行場負担軽減推進作業部会で運用停止期限が19年2月に設定され、政府は14年10月に「全力で取り組む」との答弁書を閣議決定した。

 だが、新基地建設に反対する翁長知事が誕生すると、政府は徐々に変節した。

 運用停止の定義は、中谷元・元防衛相が15年3月の衆院安保委員会で「飛行機が飛ばないということだ」と説明した。だが同年4月24日の同委員会で「幻想を与えるようなことは言うべきでない。撤回する」とすぐに覆した。

 同4月30日には菅義偉官房長官が会見で(1)空中給油機能(2)緊急時着陸機能(3)オスプレイの運用機能-の停止だと、運用停止とはほど遠い案を提示した。

 16年に入ると菅氏と中谷氏が相次いで、5年以内運用停止は「辺野古移設への協力が前提」などと発言。米側との公式な交渉も行わないまま、取り組み停滞の責任を県側に転嫁する姿勢を示した。
 17年2月14日には安倍首相が衆院予算委で「残念ながら翁長雄志知事に協力していただいていない。難しい状況だ」と述べた。
 現在、政府は安倍総理のこの発言を「公式見解」と位置付けている。小野寺氏は16日の会見で安倍首相のこの発言を挙げて実現を困難視した。

 だが、翁長知事が「協力いただけていない」という理由はあいまいなままだ。

 小野寺氏は「翁長知事が埋め立て承認を取り消したことにより、政府と沖縄県との間で訴訟が起きるなど、当時と状況が変化した」と説明するが、現在も工事は進んでいる。

 工事が実際に止まったのは和解による集中協議期間の約10カ月だけ。小野寺氏はその期間を付け加えることで運用停止が可能になるか問われたが、回答を避けた。

 防衛省関係者は「どれだけ遅れれば運用停止が可能になるか分からない。定義のこともある。危険性除去のために全力で取り組むとしか言えない」と頭を抱える。

 期限まで1年となった「5年以内運用停止」。所属機の事故やトラブルが相次ぎ、周辺住民が不安を抱える。運用停止の目的とする危険性除去とはほど遠い現状が放置されており、政府の責任が問われている。