夜間中学の補助打ち切り 県教育庁「成果出た」 学校側、寄付募り継続へ 珊瑚舎スコーレ


この記事を書いた人 大森 茂夫

 戦中・戦後期の混乱で義務教育を受けられなかった人らを対象に、夜間中学校を運営している珊瑚舎スコーレ(那覇市)に沖縄県教育庁が2011年から実施してきた支援事業が、17年度で打ち切られることが2日までに分かった。県教育庁は「15年度で終了する予定だったが、この年度に入学した人が卒業する本年度までは事業を延長した。事業の成果はある程度出た」と説明している。一方、珊瑚舎スコーレは今後は寄付を募り、夜間中学を継続する考えを示している。

 県教育庁の支援事業では講師の手当や光熱費、施設の賃借料の一部を補助しており、17年度の珊瑚舎スコーレへの支援額は395万円。支援対象者は1932~41年生まれの人。授業は支援対象者を受け入れるフリースクールなどに委託している。

 事業では3団体が委託を受けていた。そのうち三和人材育成会(糸満市)とエンカレッジ(沖縄市)では17年度までに対象者の受け入れを終えている。珊瑚舎スコーレでは年代を問わず17人の生徒を受け入れている。支援対象の年代の人は7人を受け入れており、うち5人は来年度以降も在籍する予定だ。

 文部科学省は全都道府県に公立夜間中学校を設置する方針を示している。県教育庁でも、県内に公立夜間中学校の設置を検討しており、今回の支援打ち切りについても「公立夜間中が設置されれば、対象者も広がる。後退ではない」と強調している。

 一方、珊瑚舎スコーレの星野人史代表は「現に義務教育を修了していない人がいる以上、夜間中学を続けていく必要がある。教育を受ける権利の保障は国や県がやっていくべきだ」と、支援継続を訴えた。

 支援打ち切りで、珊瑚舎スコーレの財政が厳しくなることが予想される。星野代表は「今までも不足分は寄付に頼ってきたが、今回も寄付をお願いしたい」と話す。

 珊瑚舎スコーレでは現在、義務教育未修了の人には無料、学び直しの人は年額3万円で授業を提供している。

 星野代表は「貧困のために義務教育を諦めなければならなかった人たちに、お金で再び学問を諦めさせるわけにはいかない」と授業料無料は維持する考えを示している。(塚崎昇平)