【中国時報】「秋菊」演奏し追悼 合唱の父 呂泉生氏没後10年


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 今年は、台湾合唱の父・呂泉生が逝去してから10周年。彼が作曲した「杯底不可飼金魚」(杯に金魚を飼うなかれ)、「阮若打開内心的門窓」(心の扉を開けば)はいまや台湾歌謡を代表する楽曲となっている。呂泉生はかつて、台湾と日本を舞台に大恋愛をし、その思い出を「秋菊」に託した。

 呂泉生が創立した栄星合唱団の元団員で、現在は台北市立交響楽団の副団長を務める郭〓岑は次のように説明する。「秋菊」は、日本詩人・佐藤春夫の詩作である「断章」を呂泉生が作曲した。日本人の恋人だった重子とは、留学先の東京で知り合ったが、やがて第2次世界大戦が勃発。呂は台湾の父が危篤との知らせを受けて帰国し、なくなく重子との関係を断念した。帰国後しばらくして、彼の元に署名のない一枚の手紙が届いた。内容は佐藤春夫の「断章」の詩で、重子が送ったものだった。感激した呂は知人に頼んで中国語に翻訳してもらい、詩に曲をつけて「秋菊」を創作し、重子に送った。お互いこれが最後の手紙となったという。

 先日、台北市立交響楽団が「花的絮語(花のささやき)1936」音楽会で、「秋菊」を演奏し、つらい戦争時代の台湾と日本を生きた呂泉生を追悼した。

※注:〓は王ヘンに「文」