会議で何を話したっけ?そんな悩みを解決する「グラレコ」「ファシグラ」に注目


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 会議やワークショップ、対話イベントなどに参加し、「今日は有意義な話し合いだった」「ためになった」と思っても、後からメモを見直すとよく分からない、うまく人に伝えられないといった経験がある人は多いはず。議論の内容をその場で文字や図で「見える化」する技術が注目されている。(大城周子)

「子どもの貧困政策論」をテーマに開かれた講座でグラフィックレコーディングを描くちょこさん=2月、沖縄大学アネックス共創館

 情報を整理・構造化してリアルタイムで示すことで、議論の全体像や流れが一目で共有しやすい、個々にメモを取らずに済むので話に集中できるなどのメリットがある。これらの技術は、主に記録を目的とした「グラフィックレコーディング(グラレコ)」や場の活性化を促す「ファシリテーショングラフィック(ファシグラ)」と呼ばれる。

 ちょこさん(室伏長子さん)=宜野湾市=はフリーの「コトバグラフィッカー」という肩書で、沖縄県内各地でグラレコやファシグラの書き手として活動している。活動のきっかけは福祉の現場で働いていたときの気付き。障がいのため意思疎通が苦手な相手とも、紙上に落とし込むことで落ち着いて話を進められた。さらに、聴いた内容を文字情報に変換することが苦手な人も、まとめられたものを目の前にすると議論が活発になり、ユニークな発想が生まれた。ちょこさんは「今まで拾えなかった声を拾えるようになるし、一方通行ではなく互いに学び合う環境をつくることができる。障害の有無に関わらず社会にとって必要なことではないかと活動を始めた」と語る。

沖縄ファシグラ研究会の様子。それぞれのまとめ方を比べながらいいところや改善点を話し合う=15日、那覇市天久

 ちょこさんが意識しているのはまず「何のために書(描)くのか」だという。整理か振り返りか、共有か、など目的を明確にする。そして「誰のために」「どんなことを描きどんな作用をもたらしたいか」を考えながら、色分けや矢印、囲みなどを使い分ける。「自分の主観を基準に、書く書かないを判断せず、一人一人が紡ぐ言葉を大事にしたい」と話した。

 ちょこさんもメンバーの1人の「沖縄ファシグラ研究会」は、沖縄でファシグラを実践したい人が集う有志の勉強会。毎月1回、それぞれの課題や疑問を持ち寄り、実際に描きながらその都度フィードバックすることで互いの技術を高め合う。3月の勉強会には4人が参加し「場面に合ったファシグラとは」「同じ話を聴いてどう描くか比べる」などを議題に行った。描き方にそれぞれの特徴があり、「補足は茶色、決定事項は赤で描くようにしている」といったテクニックから「自分の考えと違うときも『情報の変換器』として描く。言葉を切り取っても言い換えはしない」など心掛けまで意見を重ねた。

 現在のメンバーは教員や福祉職、まちづくりに携わる人、行政、会社員などさまざまなバックグラウンドを持つ。会の立ち上げ人の1人、平中晴朗さんは「練習したことをそれぞれの現場に持ち帰り、さらに出た課題を皆で共有できる」と話した。会の活動はフェイスブックで発信している。