政策論争 熱く 沖縄市長選立候補予定2氏公開討論会


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(左から)桑江朝千夫氏、諸見里宏美氏

 【沖縄】22日投開票の沖縄市長選を前に、沖縄市の地域ラジオ局「FMコザ」が7日、立候補を予定している現職の桑江朝千夫氏(62)=自民、公明、維新推薦=と新人で前市議の諸見里宏美氏(56)=社民、共産、社大、自由、民進推薦=による公開討論会を市上地のコザミュージックタウンで開いた。待機児童問題や1万人アリーナ建設計画、給付型奨学金の導入などについて意見の相違や政策手法の違いが浮き彫りとなった。クロス討論ではお互いに質問をぶつけ合い、白熱したやりとりが繰り広げられた。(文中敬称略)

待機児童問題

桑江氏 受け皿5400人に増員

諸見里氏 保育士確保へ補助

―待機児童問題についての政策は。

 桑江 この4年間で1663人分の受け皿を新たにつくった。しかし雇用、経済状況がよくなったため、2014年当初は計5千人分をつくれば解消できる計算だったが、5299人分が必要になった。18年度中に受け皿を5400人分にしたい。待機児童は昨年10月に約500人だったが、今年4月には約300人になっている。待機児童ゼロへ対策を進めていく。

 諸見里 保育の現場では、保育士が辞めてしまう現状がある。受け皿があってもそこで働く人がおらず、定員割れが起きてしまう。安定して働ける環境を確保することで、子どもたちの受け皿ができる。土曜日はなるべく家庭内保育をしてと通知があるが、保護者は土曜日も働かないといけない。市の予算を付け、国や県の補助も活用して保育士を確保していきたい。
 

1万人アリーナ

桑江氏 経済効果は大きい

諸見里氏 諸課題解決を優先

 ―1万人規模のアリーナについての政策は。

 桑江 有名アーティストのツアーが沖縄でも楽しめるようになる。琉球ゴールデンキングスのホームアリーナに位置付け、世界バスケ連盟はワールドカップを行うと決定した。アリーナがもたらす経済効果は計り知れない。子どもたちが誇りを持つ建物になる。本体工事は150億を上回らないくらい。3年間政府にお願いし、9割の高率補助がおおむね認められた。

 諸見里 総事業費がおよそ150億円、おおむね9割の補助が認められたと言うが、まだ何一つ明らかになっていない。試算根拠も過大で、需要予測が甘い。建設も大手ゼネコンが主導している。宿泊施設が足りない課題や交通渋滞、周辺地域での路上駐車の問題もある。これらの課題を検証し、解決してから、琉球ゴールデンキングスを後押ししたい。
 

クロス討論

桑江氏の質問 「循環バスの財源は」
諸見里氏 「市長給与カット」

 桑江 市内全域の循環バスの事業費見込みや財源、負担はどれくらいか。

 諸見里 市東部や北部地域で循環バスを運行してほしいとの要望がずっとあった。市長給与20%カットや市長公用車の廃止などを財源に充てたい。通学費を確保するためバイトする学生もいる。循環バスが年配者だけでなく、学生や子どもの貧困対策にもなり、助けにもなる。民間と連携して体制を整えたい。

 桑江 現在第3子から給食費を無料化している。諸見里氏は給食費無料化をどれくらいの規模で実施するのか。

 諸見里 2017年の沖縄市の年間所得200万円未満の世帯は3万2351世帯で、市全体では53・2%に上る。生活保護率は県平均が25・17‰(パーミル)だった一方、市は1・5倍の37・50‰(パーミル)。一気に進めることはできないかもしれないが、所得に応じて段階的に進めていく。市の実態を直視すべきだ。

 桑江 夜間中学校の必要性を私たちも検討し、アンケート調査しているが実態が把握できていない。市内に需要はあるのか。

 諸見里 市教委への聞き取りによると市内中学校の不登校生徒数は1月時点で193人、3・92%の生徒が不登校だ。中学卒業後、進路が未決定で進学も就職もしない子どもが2016年度は42人いた。ひとくくりにできないが、そのうち要保護、経済的な理由で進路未決定の子が35人、要保護が14人。こうした実態を鑑みても需要はある。
 

諸見里氏の質問 「サーキット整備は」
桑江氏 「まず多目的広場」

 諸見里 1万人アリーナの総事業費や市民の負担額を説明してほしい。

 桑江 本体建設費はおおまかに150億円。市の負担額については、これから実施設計するところで、9割の補助を国に認めてもらい、それから数字が出てくる。造った後の市民負担は、予測で毎年3億円ほどだと思うが、ネーミングライツや民間の資金なども活用できるので、マイナス負担にはならない。

 諸見里 補助は基地の再編事業推進補助金か。アリーナは嘉手納弾薬庫知花地区への施設受け入れとのリンクにしか見えない。

 桑江 アリーナは4年前に出した公約だ。その後に施設の移転が出てきたので、リンクはしていない。重要なのは、これから本体工事の予算を出すということだ。4月以降に建設のための予算を提案するかどうかにかかっている。私は新しい再編交付金制度を十分に活用し、しっかりと進めていく。

 諸見里 4年前に本格的サーキット場の整備、自動車関連企業の進出とうたっているが、これらの公約はどうなったのか。

 桑江 本格的なサーキット場は長期的に考えているビジョンだ。コザモータースポーツフェスティバルを3年前から開き、だいぶ市民、県民にモータースポーツに対する理解が深まってきたと認識している。まずは二輪、四輪のジムカーナや四輪のドリフトができる多目的広場の建設から始め、将来のサーキット場へのステップにしたい。
 

リスナーの質問

「給付型奨学金は」
両者、創設に積極姿勢

 ―奨学金制度についての考え方は。

 諸見里 市には奨学金制度があるが、大学などに行く場合は卒業時に既に借金を抱えている状況だ。そのため返済のいらない奨学金を創設したい。力があっても経済的理由で諦めてしまうなど、若者の夢を奪わないようしっかりとした奨学金制度をつくりたい。

 桑江 経済的理由で大学進学が困難な方に手を差し伸べるのは当然だ。返す必要のない給付型奨学金にも大変興味がある。これは原資や対象、対象者の選考方法をどうするかなど制度設計が重要だ。社会の流れもあり、前向きに検討する必要がある政策だ。
 

 桑江朝千夫氏(くわえ・さちお)1956年1月生まれ、市住吉出身。日本大卒。市議、県議を経て、2014年4月に初当選。

 諸見里宏美氏(もろみさと・ひろみ)1961年11月生まれ。市上地出身。沖縄国際大短期大学部卒。2010年9月に市議初当選。