狙いは学びの「高・大 」接続 現高校1年生から対象! 大学入試制度こう変わる


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

プレビュー
 

 新年度が始まりました。本年度の高校1年生が、受験生になる2020年度から大学入試制度が変わります。背景にある考え方は、大学と高校、そして小中学校の学びの接続です。大学入試センターが実施する大学入学共通テストでは記述式の問題も導入されるなどと関心を集めています。

 3月28日に、同テストの作問方針を担う大学入試センター審議役の大杉住子氏を招いて行われた教育講演会の情報を基に、新しい制度を解説します。

学習指導要領 主体的、対話的学びに

大学入試センター審議役 大杉住子さん

 学習指導要領とは国が定める教育課程(カリキュラム)の基準です。教科書の編さんや各学校の教育課程もこれに基づき作られます。約10年に1度改定があり、小学校は2020年度、中学校は21年度、高校は22年度から新しい学習指導要領が全面実施されます。

 改定のねらいは、AI(人工知能)時代、グローバル社会という急激な変化の中で、変化に受け身で対応するのではなく未来の創り手となるために必要な力を育むことです。日本の子どもたちはよく勉強していて、国際的にも高い学力と評価されていますが、学びが生活や社会に結び付いていないのではないかと指摘されています。

 これらを踏まえ、学校教育を通じてどのような知識・技能や思考力、判断力、表現力、学びに向かう力や人間性を育んでいくのかを明確にし、主体的、対話的で深い学びを実現する授業改善や教科の新設等が図られることになりました。

共通テスト 探究過程を重視へ

 2020年度から、現在の大学入試センター試験にかわる大学入学共通テストが始まります。共通テストの作問意図について大杉氏は「現状はどうしても入試が目的になりがち。入試という閉じたシステムではなくて、自分の人生や社会という開かれたシステムにつながるように心掛けている」と語りました。

 その上で、作問は高校教諭が「試験問題企画官」として関わっていると説明。「新しいテストのヒントは先生の授業にある。全国の高校のいい授業から作問の工夫のためにヒントを得ている」と話しました。

 昨年11月、大学入学共通テストの実施に向けた施行調査(プレテスト)が行われました。大杉氏は「今回は、知識の理解や思考力を問うという狙いを重視した。作問のチャレンジをさせていただいた」と語り、探究の過程を重視した問題を多く出したと説明しました。

 ことし11月のプレテストと実際の共通テストは「ストレートに知識の理解を問う問題とバランスよく出題する」と話し、現行のセンター試験の出題傾向を受け継ぎながら新しい傾向の出題バランスを調整する方針を語りました。

 では、共通テストで増える探究を重視した新しい傾向の問題とは、どのようなものでしょうか? 具体例を見てみましょう。

フロアからQ&A

 

 教育講演会では今後の大学入試に関して来場者からの質問に大杉氏が答えました。抜粋して紹介します。

入試はどう多様化?

幅広い力を評価へ

Q.特に推薦入試やAO入試も含めて大学入試は今後、どのように多様化するか?

 大杉氏 推薦入試は「学校推薦型選抜」、AO入試は「総合型選抜」となるが、これらについて論点は二つある。一つ目は現状の選考が学問不問になっているのではないかという点、二つ目は主体性などより幅広い力をどのように評価するかという点だ。

 大学教育に必要な学力を測るために、共通テストを課すか、大学による評価を行うかのいずれかを必須化することが提言されている。

 二つ目のより幅広い力を捉える選考については、例えば東工大が毎年夏に開催している高校生を対象とした合宿「高大連携サマーチャレンジ」はグループワークによる実験などを通じて多様な課題にチャレンジしてもらい、基礎学力と発想力・独創性・グループワーク力などを評価するものとして注目を集めている。

 高校生の日常的な活動の成果を評価の基盤とするポータルサイトの実現に向けた取り組みも進められている。
 

民間の英語試験は?

多種あり信頼性高い

Q.英語の民間試験活用は公平性が担保されるのかと言われている。考えを聞かせてほしい。

 大杉氏 民間の資格検定試験は、それぞれテストの信頼性・妥当性について第三者による評価を受けながら実施されている。課題はおそらく、目的の異なる複数の試験をどのように指導に活用していくかという点だろう。

 学習指導要領が想定している言語使用の目的や場面も、各学校が編成する教育課程の目的や目標に応じ、家庭での生活や学校での学習や活動、地域での活動、職場での活動など幅広い。各学校の教育課程編成に当たって、各試験の特色をどう生かせるのかが明らかになってくると不安感は解消される。試験団体と協力して、情報提供のためのポータルサイトをつくることとしている。

既卒生、どう対応?

詳細はこれから

Q.新高2の子がいる。現役の場合、現行の入試制度になるが、一浪した場合は新しい入試制度になるのか?

 大杉氏 大学入学共通テストは、現行と同じ学習指導要領に基づきスタートする。今年のセンター試験でも、例えば国語の問題は文章と図版から情報を読み取る問題など、新しいテストにつながる傾向の問題が出題されている。問題構成が変わることはあるが、現行のセンター試験の対策が延長線上として新テストにつながると考えていただきたい。

 ただ、記述式問題は新しい解答形式になるので、これを課すかなど、大学・高校関係者と協議して、近いうちに既卒生の受検に関してもお知らせする予定だ。

 使い方

★ 第2、第4月曜日の琉球新報「MANALAB★」のページを切り抜いてスクラップ。
 

プレビューを使ってチャレンジ

★ 自分の意見をノートにまとめる
★ 小論文を800字以内で書いてみる
★ グループディスカッションやディベートの題材に使ってみる
★ 各テーマの課題を解決する提案をプレゼンテーションにして、発表する