ヤマモモの里 復活を 沖縄・山内自治会長 苗育て、活性化探る


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真っ赤な実を付けたヤマモモを自慢げに紹介する山内自治会の広山実会長

 【沖縄】「ヤマモモの里を復活させたい」―。戦前、ヤマモモの産地として栄えた沖縄市の山内地域。近年、宅地化や区画整理などでその歴史を知る住民は減っている。山内自治会の広山実会長(63)は「山内がヤマモモの産地であることを発信して地域を活性化させたい」と模索している。地域への苗の普及などに取り組んでおり、「ヤマモモの里」復活への一歩を踏み出している。

 戦前、山内と諸見里では、ムムサングヮチ(ヤマモモの季節、旧暦の3月)になると市内外からムムウイアングヮー(モモ売り)でにぎわっていた。普天間高校に通っていた広山会長は「友人がヤマモモを買おうとした時に『俺の家に来たら無料で食い放題だ』と誘っていた」とヤマモモが至る所にあった時代を思い浮かべる。

2002年に建立された「山ももの碑」=9日、沖縄市の山内自治会

 しかし近年は宅地化や区画整理などが進み、地域に残るヤマモモは私有地内に残るのみ。山内が「ヤマモモの里」と呼ばれていたことを知らない人も多い。

 ヤマモモの産地であることを知ってもらおうと、山内自治会は2002年、「山ももの碑」を公民館敷地内に建立した。碑には、ヤマモモが盛んだった当時の生活風景を描いた歌が刻まれている。山内にはヤマモモにまつわるさまざまな言い伝えも残されている。

 碑の隣にはヤマモモの大木が1本そびえ、緑や赤の小さな実がたわわに実る。広山会長は「4月中旬になると、鳥が実を食べようとたくさん飛んでくるよ」と話す。

 ヤマモモ

 広山会長は数年前から、敷地内のヤマモモの種から苗を発芽させ、地域に普及しようと取り組んでいる。公民館の裏には、一つ一つプランターに入れられ、発芽した苗が大事に育てられている。「地域がヤマモモでいっぱいになったら、ゆくゆくはヤマモモのジャムなど加工品を作って販売したい」と期待を込める。山内自治会の「ヤマモモの里」復活に向けた取り組みは始まったばかりだ。
(上江洲真梨子)