世界自然遺産登録を目指す「奄美大島、徳之島、沖縄島北部および西表島」に関し、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関の国際自然保護連合(IUCN)は今月中旬までに登録が妥当か評価を勧告する。ユネスコは勧告を受け、6月下旬から開催する世界遺産委員会で審査し、登録を決定する。県は世界遺産委員会の会議中継のパブリックビューイングを計画するなど、登録に向けた取り組みを進める。一方、識者からは返還されたばかりの米軍北部訓練場跡地の編入など課題も指摘されている。
IUCNは、世界自然遺産登録が妥当かどうか4段階の評価で(1)登録を推奨する「登録」(2)追加の情報提供を求め、1~2年後に登録を目指す「情報照会」(3)今回の登録を見送り、今後2~3年以上かかる「延期」(4)遺産としての価値を認めない「不登録」―の中から勧告する。
政府が2017年2月に「奄美・琉球」の世界自然遺産登録の推薦書を提出した後、IUCNは10月に視察し12月までに報告書をまとめた。報告書では、国に対し米軍北部訓練場返還跡地を将来的に遺産区域として拡充することの妥当性や、科学的根拠の明確化など6項目を指摘。国は専門家の助言を受けて指摘に対して回答した。
世界自然遺産の審査過程に詳しい筑波大学大学院の吉田正人教授は「今回の勧告で、IUCNが国からの回答に納得したかどうかが表れるだろう」と話す。直近で世界自然遺産に登録された知床(05年、北海道)、小笠原諸島(11年、東京都)では「登録」の勧告でも解決すべき課題について指摘があったことから「今回は推薦された範囲が広く、さらに多くの指摘が付くだろう」と予測する。
16年12月に返還された米軍北部訓練場の編入については、4千ヘクタール以上の返還地で、不発弾や土壌汚染の調査を8カ月間で終えたことから、自然保護団体からは「登録ありきのため短時間で進め、不完全だ」との指摘も上がっている。
東村に住むチョウ類研究者の宮城秋乃さんは「何十年も軍事施設として使われていた土地だ。跡地汚染をきちんと知らないまま登録しても、生態系保護につながらない」と懸念を示した。