ヤギ、季節外でも繁殖 県畜産研が試験飼育で成功


この記事を書いた人 Avatar photo 宮里 努
山羊繁殖管理マニュアルを活用した生産振興を呼び掛ける、県畜産研究センターの安村陸研究員=今帰仁村

 沖縄県畜産研究センター(畜研)は、ホルモン剤を使わずにヤギを通常の繁殖期以外に繁殖させることに成功した。雌ヤギの授乳期を短くするなど四つの対策を行うことで季節外でも発情する可能性が高まる成果が出た。ヤギが1年に2回以上出産するようになれば販売用の頭数が増え、農家の所得増大につながりそうだ。

 ヤギは9~11月が繁殖期だが、まれに夏季にも繁殖することがある。畜研が季節外繁殖の事例がある農場を視察し、分析した結果、①出産後、早期に離乳させる②母ヤギの水分量を制限し早期に乳を作らない状態にする(乾乳)③光がほとんどない畜舎で飼育する④雄ヤギを近くにおいて発情を誘発する―の4項目が季節外繁殖に関わっているとした。

 このうち早期離乳と乾乳は、母ヤギが摂取した栄養が乳の生産に回る状態を断ち、体力の回復を早める狙いがある。また、暗い畜舎で飼育することで日照時間の変化による季節感を薄れさせる効果があるという。

 この方法で畜研が試験的に飼育したところ、雌ヤギ10匹のうち9匹で4、5月の季節外に発情した。5匹は受胎し、子ヤギ8匹を出産させることに成功した。

 通常の繁殖期には10匹とも受胎し、子ヤギ15匹を出産した。年間23匹が生まれ、通常期のみに比べ出産数が1.5倍に伸びた。

 ただ、年を経るごとに繁殖期がずれていくため、母体の健康も考えれば数年おきに季節外繁殖を休む必要もあるという。

 畜研の安村陸研究員は「季節外繁殖は発情期間も短い。4項目の中でどれが効いているのかなど課題もあり、技術確立には時間がかかるが、農家の生産性を高められる可能性がある」とした。畜研がことし3月にまとめた「山羊繁殖管理マニュアル」では種付けや妊娠期の飼養方法、分娩前後にありがちな事故への対処法を解説しており「ヤギ農家の生産性を高められる。ヤギ肉不足の解消にも役立てられると思う」と意義を語った。 (知念征尚)