「夢に向かって進学」 児童養護施設の生徒ら 沖縄子どもの未来県民会議 給付型奨学金を活用


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
沖縄子どもの未来県民会議の給付型奨学金事業を活用して進学した男子学生(手前)と女子学生=3月27日、沖縄本島内

 高校卒業後は基本的に退所し、自立しなければならない児童養護施設の子どもたち。生活費を稼ぐのに手いっぱいで、学ぶ意欲があっても進学を断念する生徒が多い。生徒をサポートしようと、沖縄子どもの未来県民会議は2017年度から、給付型奨学金を支給している。3月に本島内の施設を出て奨学金を活用して専門学校に進んだ2人が取材に応じ、「夢に向かって頑張りたい」と学ぶ喜びを語った。

 「高校3年時は退所に向けて進路決定と、母親と対話をしなくてはいけなかった。かなり苦しかった」。女子学生(18)が振り返る。父親を病気で失った後、母親が精神的に不安定になり、中学3年で入所。当初は新しい環境や高校受験への不安が強く、自分の殻に閉じこもった。だが、真剣に接してくれる施設の職員には次第に心を許すようになった。

 同じ部屋の生徒にマッサージしたところ「足が細くなった」と喜ばれ、エステに興味を持つように。就職か進学か悩み抜いた末、エステの勉強ができる県内の専門学校へ進むと決めた。

 高校入学後はスーパーで3年間アルバイトをしながら、簿記2級の資格も取った。「専門知識を身に付けて、将来的には自分の店を開きたい」と夢を描く。

 2歳で入所した男子学生(18)も、基金を活用して専門学校に通う。将来は、航空機の誘導などを担うグランドハンドリングになることを希望している。進学にかかる費用の負担は大きいが、基金のサポートで目標に進んでいる。

 中学から高校まで6年間、ソフトテニス部の活動に打ち込んだ。九州大会出場など飛行機に乗る機会がたびたびあり、空港での仕事に憧れるようになった。高3の早い段階で進路を決め、部活を引退した後はアルバイトもした。「やりたいことが見つかったから迷いはなかった」と言い切る。

 18年度に新たに給付を受け始めた児童養護施設の卒業生らは、この2人を含めて18人。本格的にエステの勉強を始めた女子学生は、「専門的で難しい話もあるけど、理解できるまで先生に聞いたりしている」と充実した新生活を送っている。金銭面で悩み、就職を考えた時期を振り返り、かみしめるように話した。「進学は自分の勇気にもなる。夢を諦めないで良かった」
(前森智香子)