那覇、民泊条例を可決 来月15日施行 県より規制拡大


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 那覇市議会(翁長俊英議長)は9日の臨時会本会議で、住宅宿泊事業法(民泊新法)の条例案を全会一致で可決した。実施要綱の早急な策定や、事業者と管理業者に市民の生活に関わる問題の発生を未然に防ぐ仕組みの構築を求める付帯決議も全会一致で可決した。条例は6月15日に施行される。

 市条例案では、県条例と同様に住居専用地域(第1種・第2種低層住居専用地域、第1種・第2種中高層住居専用地域)を制限区域とし、年間営業日数を約110日としたことに加え、第1種住居地域で営業する家主不在型(管理業者駆けつけ型)の民泊は、日曜日正午から金曜日正午までを制限し、年間約110日は営業可能とした。

 同地域の家主や管理業者が常駐している民泊は、法律の要件を適用し年間180日とした。学校周辺の制限は学校敷地周囲100メートルとする県条例の範囲を踏襲した上で、文教地区まで適用範囲を広げ、営業可能日数を学校の休業日を除く年間約120日とした。

 付帯決議では(1)実施要綱の1日も早い策定(2)関係機関との連携体制の強化(3)事業者と管理業者に対し、市民生活に関わる問題の発生を防ぐ仕組みの構築、発生した際の適切な対応の確立、市民への周知徹底(4)民泊事業の状況を毎年度調査・検証し、議会と市民に公開することの4点を市に求めた。

 厚生経済委員会では、条例内容を評価する声もあった一方、条例制定に向けた作業開始が遅く、パブリックコメント期間が規定の1カ月よりも短くなったことへの指摘もあった。条例運用後の職員体制や、問題発生を防ぐ仕組みを求める声が相次いだ。

【解説】

 一般住宅に有料で客を泊めることができる民泊の営業ルールを定める住宅宿泊事業法(民泊新法)で、那覇市が独自の条例を制定した。中核市での独自条例制定は全国8例目になるとみられる。住民生活の安心安全を重視し、県条例よりも規制範囲を広げた内容だ。

 17年の市調査では、市内の民泊施設は622件のうち旅館業法の許可を取っていない違法民泊は522件で8割以上を占めた。17年度に市が苦情を受け付けた件数は450件を超える。観光客増で宿泊需要も増えるが、現時点で市内の宿泊施設の不足はないとして、市は住民生活の安全を重視する方向にかじを切った。

 第1種住居地域に限っては、家主と管理会社が常駐する民泊と不在型民泊で規制に差をつけた。家主居住型の民泊について市は「暮らしや文化を体験する観光交流コンテンツ」と評価する。管理会社が不在の民泊とひとくくりにしなかった点でも独自色を出した。

 条例が制定されても、騒音やゴミ出しのトラブル防止には事業者に要綱を守らせ、確認を強化する必要がある。議会でもその重要性が指摘されて付帯決議に至った。届け出なしに違法な状態で営業を続ける「ヤミ民泊」の規制には、市民からの通報が必要になる。住民生活を守るためには、条例に沿って細かい規則を定めた要綱策定や、警察などの関係機関との連携、市民への周知といった体制構築が今後の鍵となる。 (田吹遥子)