沖縄県の翁長雄志知事が15日に開いた会見は、予定より早い退院をアピールし、膵臓(すいぞう)の腫瘍を摘出した手術の成功や順調な回復など、憶測とともに流れている健康不安説の払拭(ふっしょく)を図った格好だ。
12月までの任期を全うすることに意欲を示した一方で、がんの中でも治りにくいといわれる膵臓がんが確定したことに動揺も広がる。退院後も通院しながら抗がん治療を続ける中で、公務への復帰のめども今後の治療次第となり、2期目出馬については依然、見通しにくい状況といえそうだ。
退院直後から報道機関の質問に受け答えする姿を県民に見せることで、今後の県政運営においてトップ不在という見られ方を解消し、政治的な判断を下すのに支障がない体制であることを内外に示す狙いがあったとみられる。
特に米軍普天間飛行場の県内移設で国が7月にも名護市辺野古海域へ土砂の投入を始めようとする中で、県側は埋め立て承認「撤回」の時期を巡って重大な局面を迎えつつある。
県が承認撤回に踏み切った場合でも、国はその効力を失わせる執行停止を裁判所に申し立て、1カ月程度で工事を再開させる方針だ。県政は秋の知事選で与党陣営を勝利に導くことを見据えながら、「撤回」という基地建設への異議申し立ての影響力を最大化するタイミングを計っており、県幹部は「知事の高度な政治判断になる」と指摘する。
普天間飛行場の辺野古移設の是非を問う県民投票の実現に向け、市民主体で署名活動が始まる動きも加わり、撤回時期の判断は複雑化している。
政局観に長けた翁長知事の退院により、今後の基地問題と知事選を巡る政治的な駆け引きが水面下で一気に活発化することが予想される。
(与那嶺松一郎)