くすぶる健康不安説 オール沖縄枠組み影響も 翁長知事が退院


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翁長雄志知事の記者会見に多くの報道陣が駆けつけた==15日午後1時32分、県庁

 膵臓(すいぞう)がんで入院中だった翁長雄志知事が15日、退院した。約1カ月ぶりに表舞台に姿を現したことで、次期知事選に向けた翁長氏の去就が再び注目を集めた。15日の会見で知事選への対応を問われた翁長氏は「元気になり公務をしっかりとこなしていくのが今一番の眼目だ」と語り、これまで同様に言及を避けたが、与党は「翁長知事の代わりは翁長知事しかいない」と、引き続き翁長氏擁立の構え。一方、野党からは「次の選挙は厳しい」と、否定的な意見が大勢を占めた。退院直後の会見で、早期の公務復帰に意欲を見せた翁長氏だが、与野党内の一部には健康不安説がくすぶったままだ。

■朗報

 14日夕、複数の県政与党幹部の携帯電話が鳴った。電話の相手はいずれも富川盛武副知事で、副知事は開口一番「朗報です」と告げ、翁長知事が翌15日に退院し、自ら会見することを明かした。15日、与党幹部の一人は「会見で元気な姿を見て安心した」と胸をなで下ろした。沖縄の日本復帰の日に会見したことに触れ、「5・15に会見すること自体、翁長知事は政治家だということだ。翁長知事の代役は誰も務まらない」と語り、翁長氏の2期目出馬に期待感をにじませた。

 会見には、記者団に混じって翁長氏を支援する沖縄観光コンベンションビューローの平良朝敬会長の姿もあった。会見後、平良氏は記者団に「回復が早いなと思い、私自身も力が湧いてきた。知事自身、(公務復帰に)意欲を持っており、安心した」と語った。県議会与党の会派おきなわと共に結成する「翁長知事を支える政治・経済懇話会」を念頭に「中道を集めていく。しっかり進める」と話し、翁長氏再選に向け超党派の再構築を目指す決意を示した。

 ただ、見つかった腫瘍が悪性だったことで、与党の一部には不安感も渦巻く。与党県議の一人は「2期目は厳しいのではないか。翁長氏の代役がいないということは、翁長氏以外の候補だと『オール沖縄』の枠組みが維持できないことの裏返しだ」と指摘した。

■十数人の候補者

 与党と打って変わって、野党自民は具体名を挙げた候補者選考作業を本格化させている。これまで選考委員会には自薦他薦で政治家、経済界など十数人の名前が挙がり、本人への意思確認などの作業に着手している。

 翁長氏退院の一報に触れた自民県連幹部の一人は「悪性の腫瘍があった場所や今後の化学療法を考えると、翁長氏の2期目は厳しいのではないか。ただ、いずれにしても我々は勝てる候補を決めるだけで、相手候補が誰であろうと、その作業は変わらない」と淡々と語った。
 (吉田健一)