【島人の目】反EU 伊新政権の危うさ


社会
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 過半数を制する政党がなかった3月4日の総選挙を受けて、イタリアの政治不安が続いている。支持率1位の「五つ星運動」と2位の「同盟」は、議席を合計すれば過半数に達することから連立政権樹立を目指してきた。21日、両党は政権合意に達し首相候補として法学者のジュゼッペ・コンテ氏をマッタレッラ大統領に推薦。ところがその直後にコンテ氏の学歴詐称問題が飛び出して、政権発足が再び頓挫しそうな状況に。

 大統領はもともと五つ星運動と同盟の連立政権には懐疑的な立場。両党は分かりやすく言えば左右のポピュリスト(大衆迎合主義)勢力。バラマキとも批判される政府歳出の大幅な拡大と「反EU(欧州連合)&反移民差別主義」を掲げて支持を伸ばしてきた。

 増大する難民・移民への反感はイタリアのみならずEU各国に共通した現象。イタリアの特異な点は2010年に始まった欧州債務危機の後遺症からまだ回復していない点だ。EU圏内最大の約300兆円もの累積債務を抱えて呻吟(しんぎん)している。

 EUは借金を減らせ、緊縮財政を続けろ、とイタリアに強く迫っている。ところが五つ星運動と同盟は、EUと合意している財政緊縮策をほごにして政府支出を大幅に増やすと主張。マッタレッラ大統領はそこに異議を唱えている。彼は憲法の規定によって首相候補の認否権を持つため判断が注目されている。

 財政赤字を解消するどころか、さらに借金を増やそうとする連立政権が船出をすれば即座にEUと対立するだろう。新政権は最悪の場合、英国に続いてEUからの離脱を要求するかもしれない。それは自殺行為と形容しても過言ではない愚かな策だ。たとえ「反EU」を掲げ続けても、連立政権はEUとの対話を模索し決して離脱を考えるべきではない。

 (仲宗根雅則 イタリア在、TVディレテクター)