辺野古サンゴ移植強行  高水温対策にも疑問符 


この記事を書いた人 Avatar photo 桑原 晶子

 米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古での新基地建設で、沖縄防衛局がサンゴの産卵期や高水温期にも移植を実行するとの方針を示したことに、サンゴの専門家から批判の声が相次いでいる。工事が進んだことで護岸に囲われた海域の水温が上昇し、サンゴの生息環境を維持する必要も生じてきた。防衛局は6月から、移植までの期間に高水温になりすぎるのを防ぐための対策を取る。しかし、その対策法は国内に前例がなく保護効果を証明するデータは示されていない。移植時や移植後にサンゴに掛かる負担を軽減する保護策も未定だ。

 ■工事で水温上昇
 沖縄防衛局のシミュレーションによると、護岸がある場合は自然状態と比べ、海域の流速が秒速1センチ低下し水温は0・1度上がる。対策として遮閉シートで濁りを防ぎながら護岸外の水を取り入れ、遮光ネットで直射日光を避ける。

 移植時期について沖縄防衛局は当初、県のマニュアルを参照し「最も適切と考えられる手法」で移植するとし、高水温期と産卵期の5~10月ごろを避ける方針だった。

 サンゴの生物学が専門の東京経済大学の大久保奈弥准教授の論文が県マニュアルの基となっている。大久保氏は、実験データから繁殖期と高水温期を避けるべきだと記している。大久保氏は防衛局の方針変更に「サンゴが死ぬリスクが増す」と指摘。環境監視等委員会が防衛局の方針を認めたことも批判した。

 琉球大理学部の竹村明洋教授(サンゴ礁生物学)は、防衛局が示した新たな対策がサンゴに与える影響のデータがないことを挙げて効果を疑問視した。流速や水温、塩分濃度などの物理的な状況をシミュレーションするだけでは判断できず「生物学的な視点が必要だ。別の場所で、対策が有効か検証しないといけない。悪影響が出てからでは遅い」と指摘した。

 ■攻防の中で 
 辺野古新基地建設を巡っては、これまでも県との攻防の中、工事を前に進めたい政府は方針変更を繰り返してきた。埋め立て区域近くに生息するヒメサンゴについても移植方針を転換し、移植せずに工事を進めることにした。その手法により、一部の区域で7月にも土砂投入を始めることを「可能」にした。資材の搬入方法や護岸の使い方についても当初予定との変更が指摘されている。

 防衛局は埋め立て申請時、工事前にサンゴ類を移植するとして県から承認を得た。県は「計画を変える場合は埋め立て承認時の留意事項に基づいて県の変更承認を得るべきだ」としている。埋め立て承認撤回の根拠の一つとなる可能性もある。
 サンゴ移植の許可権限は新基地建設を阻止するための知事権限の一つとされる。一方で、不許可にする際は正当な理由を付けなければならない。

 防衛局は移植のための特別採捕許可を県に申請中だ。防衛局の保護対策や、それに対するサンゴ専門家の批判などを考慮し、県がどのような判断を下すか、注目される。 (明真南斗、清水柚里)