微生物活用し廃水処理 電力の自給自足型装置目指す OIST研究チームが開発


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生物燃料電池を活用した廃水処理装置の開発を進めているOISTのデイヴィッド・シンプソン技術員(右)と井上智晴技術員=5月30日、沖縄県那覇市首里の瑞穂酒造

 沖縄科学技術大学院大学(OIST、沖縄県恩納村)の研究チームが、稼働に必要な電力を自らまかなう廃水処理装置の開発を進めている。有機物を分解する際に電気を発生するバクテリアを活用した微生物燃料電池の技術を使い、自給自足型の装置を目指す。廃水処理に課題を抱える事業所や電力確保が困難な地域などでの活用が期待され、沖縄発の技術として県外・国外への展開を目標にしている。

 装置には「発電菌」と呼ばれるバクテリアを繁殖させた電極が組み込まれている。処理が必要な廃水を装置内で循環させ、廃水に含まれる有機物を分解・浄化する。その過程で発電菌は電気を発生させる。装置を動かすために必要なエネルギーを発電菌が発生させた電気でまかなうことで自給自足が可能となる。装置内で処理された廃水は下水に流せる基準まで浄化されているという。

 装置に使われている技術はOISTのゴリヤニン・イゴール教授とフェドロビッチ・ビヤチェスラフ研究員が開発した。OISTが特許を取得している。装置は廃水を循環させるためのモーターが機械部分の中心というシンプルな構造。電極などの部品は老朽化しにくい素材を採用しており、頻繁に交換する必要はないという。メンテナンスのための特別な技術や費用を必要とせず、運用コストを低く抑えることができる。電極で繁殖している発電菌は成長の速度が遅い種類で、極端に増減することはなく安定した数を維持できるという。

 2013年から瑞穂酒造(那覇市)に試作機を設置。泡盛製造の際に出る廃水を処理しながら、実用化に向けた研究を進めている。今年5月からは商品化を見据えた試作機の運用も始めた。19年6月までにベンチャー企業を設立し、沖縄発の廃水処理技術として事業展開していく方針だ。

 研究を担当するOISTのデイヴィッド・シンプソン技術員は「泡盛や豆腐の工場など多くの廃水を出す事業所のほか、畜産業などで装置が活用できる。電力確保が難しい離島でも使える装置で、さまざまな課題を解決できるはずだ」と強調した。 (平安太一)