操縦士救助に家族安堵 ヘリ墜落 粟国、空路失い困惑


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 7日に発生したエクセル航空のヘリコプター墜落事故。一歩間違えばパイロットの生命が失われていた可能性もあった。2015年に粟国空港で発生した第一航空の着陸失敗事故で那覇―粟国間を結ぶ定期便が途切れて以降、同社のヘリは不定期運航ながら、住民の移動手段を担ってきた。今回の事故を受けて、原因が究明されるまで全ての運航を休止する。空路を失う離島住民への影響は大きい。

 パイロットの男性(46)は首や腰を骨折する重傷を負い、那覇市内の病院で治療を受けている。病院には家族が駆け付け、心配な様子で治療を見守った。

 「大丈夫ね?」「大丈夫だよ」。病院に搬送された男性は首を固定して点滴を受け、ベッドに横になっていた。つらそうな表情をしていたが、70代の母親が声を掛けると、しっかりと返事をしたという。長い会話はできず、入院して治療する。

 母親は「(墜落の)一報が入り、落ち着かず大変だった。顔を見た限り、元気そうで少し安心した」と安堵(あんど)した様子で話した。妻や小学生と保育園生の子ども2人も付き添った。エクセル航空や那覇海上保安部の職員も男性を訪ねたが、事故の詳しい話は聞けなかったという。

 那覇市鏡水にあるエクセル航空の沖縄支社には午後5時半ごろ、報道各社が詰め掛けた。

 午後7時20分ごろ、相馬正幸副社長が姿を見せ、取材に対し墜落ではなく「不時着水」と強調した。当面、全ての運航を自粛するとし「安全第一でやるが、原因が分からない限り、対策の取りようがない。安全運航に向け誠意努力する」と述べるにとどめた。

◆住民「何を利用すれば」

 【粟国】第一航空の沖縄撤退によりエクセル航空のヘリコプターが唯一の空路だった粟国村では、村民から「怖くてもう乗れない」との不安の声や、「もはや何を利用したらいいのか」との困惑の声が上がった。

 与那則子さん(61)は「けがをしたパイロットが心配だが、乗客がいなかったのは良かった」としつつ「飛行機に続いてヘリも事故になった。じゃあ私たちは何を利用すればいいのか」と声を落とした。

 仲間幸一さん(77)は、事故の一報に「本当にショックで残念。パイロットは大丈夫だろうか」とため息をつき「飛ばなくなれば、緊急時に那覇に行く手段がない」と不安げに語った。中学生の子どもを持つ40代の女性は「ヘリがないと本当に困る。原因をきちんと調べてほしい」と訴えた。

 新城静喜村長は7日午前、那覇発粟国行のエクセル航空のヘリを利用していた。新城村長は「安全なくしてヘリは運航できない。事故原因が分かるまで飛ぶことはできない。早く事故原因を究明し、安全に運航できるよう県にも求めていく」と述べた。