県と那覇、民泊条例施行 手続き煩雑、断念する人も


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 ホテルや旅館より安く利用でき、地元の人との交流も図れるとして旅行者からの人気が高まっている民泊。住宅宿泊事業法(民泊新法)と、営業日数などを規制する沖縄県と那覇市の条例が15日に施行される。施行が近づくにつれて県内でも届け出が増え、窓口となる保健所は対応に追われている。一方で営業日数に限りがあり、ビジネスとしての採算性が低いとして参入を諦める人も多い。

 「この1週間で届け出がぐんと増えた。保健所の窓口も混雑している」。施行目前の14日、県衛生薬務課の担当者が明かす。県が所管する那覇市を除く40市町村では8日時点の届け出は98件だったが、14日には138件に。出足は鈍かったが、施行直前に動きが活発化してきたという。

 民泊新法では家主が届け出を提出した後に県や那覇市が必要な書類がそろっているかを確認して受理する。ただ、14日時点の県の受理数は63件、那覇市は1件にとどまる。那覇市生活衛生課の担当者は「届け出があっても書類不備が多く(審査が)完結できていないのが現状」と話す。

 名護市に住む65歳の女性は屋我地島に所有する空き家を使って民泊経営を検討していたが、手続きの煩雑さや採算性から考え直したと明かす。瓦をふき替えるなど約600万円かけて築50年近い古民家のリフォームを進めてきた。届け出を検討する中でさらに消防設備の整備も必要と判明。「さらに投資をするのは大変。喫茶店に切り替えようかと思っている」と転換を図る。

 空き家を活用した民泊のマッチングサービスを展開する県空室対策事業共同組合事務局の柿本洋さんは「届け出が必要になると聞いて民泊を断念する人が多い」と話す。柿本さんが勤める不動産会社は、民泊管理業者として登録もしている。ただ、家主からの問い合わせは14日時点でまだない。柿本さんは「ニーズが集中する大型連休や夏休みも宿泊できる曜日が限定される。ハードルは上がって稼働率が下がるなら、やる人は減る」と指摘した。