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復刻版 売れ行き好調 故平敷兼七さん写真集「山羊の肺」 東京の書店員投票で実現

被写体が平敷さんを信頼しきっている様子がうかがえる写真が満載の復刻版写真集「山羊の肺」

 写真家平敷兼七さん(1948~2009年)の写真集「山羊の肺 沖縄1968―2005」の復刻版がこのほど発刊された。復刻版発刊のきっかけは、丸善ジュンク堂書店(東京)の芸術書担当者が、復刻してほしい本を投票で決め、出版社に直談判する企画で実現した。那覇のジュンク堂でも、写真集としては好調な売れ行きという。

 写真集は1968年から72年までの写真が大部分を占める。登場する人たちは「子どもたちとケンケンしている大人」「元料亭のかみさん。海洋博で失敗し、一生懸命働いて借金をかえしている」「籠を作り、部落のものからお金をもらい、生計を立てている男性」など、名もなき人たちや、かつての沖縄の原風景が収められている。

 2007年4月に初版が出たが、その後絶版となっていた。16年6月にNHK日曜美術館で平敷さんの軌跡が放映され反響を呼んだ。放映後、出版した影書房には写真集の問い合わせが殺到したが、復刊は厳しいと感じていたという。


2008年5月、東京で開かれた平敷兼七さんの写真展「山羊の肺」=銀座ニコンサロン

 影書房の松浦弘幸代表は「失礼ではあるが、平敷さんは超有名な写真家というわけではないことや、当時の印刷所もなくなっており、簡単に重版できる状況ではなかった」と話す。

 丸善ジュンク堂書店からは、1月に復刻の打診があった。松浦さんは「当時の画像データが見つかり、デザイナーに相談するなどし、復刊の見通しがついた。本土の人に沖縄のことに関心を持ってもらいたいという思いもあった」と述べ、基地問題で揺れる沖縄への関心の高まりへの期待も込められている。

 浦添市城間で平敷兼七ギャラリーを営む平敷さんの次女當間七海さん(44)は「初版本は幻の写真集となっていたので、うれしく思う。待ってて良かった」と話した。NHKで放映後、写真集の問い合わせが多くあり、當間さんらは16年12月に「父ちゃんは写真家―平敷兼七遺作集」(未來社)を発行した。ギャラリーで復刻版「山羊の肺」を購入すると、平敷さん本人が彫った印鑑付きという特典がある。

 那覇市牧志のジュンク堂書店那覇店では、平敷さんの写真パネル展も開催。森本浩平店長によると「値段が高めにもかかわらず、出足は好調。那覇店にとっても待望の復刻版で、待っているお客さんもいた」と語った。写真集はB5版変形、196ページ、千部発行。4200円(税別)。