保守分裂、警戒の声 知事選・自民が佐喜真氏擁立 告示まで4ヵ月、波乱含み


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知事選に佐喜真淳宜野湾市長を擁立することを決めた自民党県連の知事選候補者選考委員会=5日午後6時半ごろ、那覇市泉崎のANAクラウンプラザホテル沖縄ハーバービュー

 11月18日の県知事選に向け、自民党県連の候補者選考委員会が佐喜真淳宜野湾市長(53)の擁立を全会一致で決定した。自民県連は今後、首長選挙で連携する公明や維新に対して佐喜真氏支援を求めていく。一方で、保守系候補として出馬表明した元沖縄観光コンベンションビューロー会長の安里繁信氏(48)との候補者一本化に向けた作業は残されたままで、佐喜真氏の地元や公明、維新からは保守分裂を警戒する声が根強い。告示まで4カ月を切る中、波乱を抱えた船出となりそうだ。

8人の候補者

 「選考委員会が『出したい候補者』は簡単に首を縦に振らない。それが選挙というもので、ましてや知事選は難しい」。自民県連幹部は、当初予定していた候補者決定の時期が1カ月以上遅れたことに対して、「織り込み済み」との認識を示した。その上で、「出したい候補者で唯一、政治家として選挙を経験してきた佐喜真氏が前向きだった」と明かす。

 自民党県連と経済界の重鎮らによる選考委の発足後、自薦他薦で寄せられた候補者は15人に上った。県連関係者によると、その中から、仲井真県政下で副知事を務めた高良倉吉、川上好久両氏に西銘恒三郎衆院議員、松本哲治浦添市長、佐喜真市長の「出したい候補者」5人に、出馬に意欲を示してた安里氏、古謝景春前南城市長、玉城信光県医師会副会長の3人を加えた計8人を軸に人選は進められた。

 ただ、佐喜真氏を含めて有力候補者はいずれも打診を固辞。出馬に強い意欲を示す安里氏に対しては、一部経済界の反発や「公明党や維新が了承しない」(県連幹部)ことなどを理由に選考から外された。終盤には、翁長雄志知事の任期前辞任による知事選の前倒しを警戒する官邸サイドが独自に説得工作に乗りだし、「佐喜真氏が断れない状況」(自民県議)をつくり出した。

「官邸主導」

 翁長雄志知事の2期目擁立の方針を固めている県政与党からは、自民の擁立決定に「官邸主導」と批判の声が上がる。

 与党は、県議会6月定例会が閉会する6日以降に、県議会与党会派や労働団体などで翁長知事への出馬要請の時期などについて話し合いを再開する予定で、佐喜真氏の知事選出馬に伴う宜野湾市長選の候補者選びも本格化させる。

 一方で、オール沖縄会議を抜けたかりゆしグループや金秀グループとの引き続きの連携の在り方にも不透明さがあるなど、県政堅持に向けた態勢の課題も大きい。

 与党幹部の一人は「官邸にとって佐喜真市長が一番都合の良い人物だということだ」とけん制しつつ、相手陣営の動きに「われわれも早く動かないといけない」と焦燥感も隠せなくなってきた。一方で別の幹部からは「翁長知事の擁立を確認しているわけだから、何も焦ることはない」と楽観論が出るなど、与党内では各党会派の認識や足並みに温度差もみられる。
 (吉田健一、知念征尚)