芸能・文化

沖縄の苦難の歴史を泣き笑いで表現 お笑いコンビ泉&やよいの「島口説」

スミ子に子どもが生まれた場面を演じる城間やよい(左)、喜舎場泉=6月30日、浦添市の国立劇場おきなわ

 エーシーオー沖縄主催の演劇「島口説(しまくどぅち)」(謝名元慶福脚本、藤井ごう演出)が6月30日から7月1日まで浦添市の国立劇場おきなわで上演された。名女優・北島角子が演じていた一人芝居を、お笑いコンビ「泉&やよい」の喜舎場泉と城間やよいによる“二人芝居”で復活させた。2人の人なつっこさや温かさ、絶妙な掛け合いを生かし、新たな島口説を生み出した。初日を取材した。

 舞台は観光客が訪れる民謡酒場から始まる。半生を語り出す酒場の女主人スミ子。2人が交互にスミ子を演じることで舞台を重層的にした。

 序盤にスミ子を演じたのは泉。とある離島で暮らす若きスミ子は、父の紹介で寡黙だが心優しい朝栄と結婚する。一方、やよい演じる親友トシちゃんは本島へ働きに出る。「本当に、本島に行くよ」というベタなしゃれを繰り返し、つい笑ってしまう。

 スミ子は朝栄の故郷の島へ嫁いでいく。干潮に歩いて島へ渡る光景を泉が生き生きと演じた。だが島の暮らしは過酷でもある。2人の間に男の子が生まれるが、ある日高熱を出す。台風で海を渡れず、子どもは治療を受けることができずに命を落とす。その後朝栄は米軍基地で働き、復帰運動にも参加するが、解雇される。生きる意欲を失い自ら命を絶つ。

 沖縄戦、米軍による土地の強制接収、コザ騒動―。スミ子と家族の人生を通して、時に歌い、踊りながら苦難と闘ったウチナーンチュの歴史が泣き笑いの演技で描かれた。

 物語を象徴するのが、2人が歌う「艦砲ぬ喰ぇー残さー」。うまいというわけではないが、親しみやすい雰囲気で観客の心をつかんだ。琉球舞踊家でもあるやよいは劇中で踊りを披露し、舞台に沖縄らしい香りをもたらした。

 公演後、泉は「母からよく戦争体験を聞かされていたけど、演じていてスミ子の人生と重なった」と振り返った。やよいは「お客さんが支えてくれた。ウチナーンチュの誰もが経験していることをお客さんと共有できた。米軍に抗議する場面など沖縄の実情は変わらないとも感じた」と話した。観劇した謝名元は「新しい『島口説』がスタートした日だ。演出が2人の良さを引き出した」と評価した。

 「島口説」は1979年に東京で初演され、全国で300回公演を重ねたが、86年を最後に上演が途絶えていた。プロデューサーの下山久が脚本を読み返して「沖縄の現実は変わっていない」と感じ、今回の再演が企画された。復活した「島口説」も東京をはじめ全国で上演されることを期待したい。

 プログラムには謝名元が初演時に書いた言葉が掲載された。今も沖縄が揺れ動く中、私たちの心に響いてくる。「僕たちに失われているもの それは、僕や君の呼吸のひとつびとつが 歴史をつくっている自覚と 時代に真正面から 向きあうことではないか だから島の歌(口説)を みんなに聞かせたい」 (伊佐尚記)