自衛隊、沖縄県警と採用説明会 人手不足背景、識者は疑問視


この記事を書いた人 琉球新報社

 自衛隊沖縄地方協力本部(沖縄地本)は16日、那覇市小禄の産業支援センターで、県警と合同で採用者の募集説明会を開いた。本島内で自衛隊と県警が合同説明会を開くのは初めて。同地本は「(進路の)選択肢が広がるほうが学生らにとってもいい」と説明するが、識者からは「自衛隊は国防が仕事。警察とは与えられた任務が異なる。一緒に説明会をやる必要性はない」との指摘が上がっている。

自衛隊と県警の合同募集説明会で耳を傾ける参加者ら=16日、那覇市小禄の産業支援センター

 少子化や好景気による人手不足などの影響で、自衛隊は全国的に人材確保が課題とされる。同地本によると、これまでに自衛隊と警察の合同説明会は沖縄のほか、22都道府県で実施されている。県内では過去に、石垣市で警察や海保、消防との合同説明会を開いたことがあるという。

 同地本は「警察など保安系公務員のくくりで、同じ志を持っている人が集まってもらえればいい」と説明する。一方で県警は「自衛隊側から持ち掛けられた話なので特にコメントすることはない」としている。

 県内にいる約7千人の自衛隊員のうち、県出身者は2割の約1500人とされる。過去10年で年間平均約200人が入隊した。地元採用枠は増えてはいないというが、同地本は「沖縄はまだ(出身者が)少ない」としている。

 16日の説明会には約50人が参加した。参加した大城和之さん(21)は「国の看板を背負って災害救助する姿をニュースで見てかっこいいと思っていた。説明会で真剣に話をしてくれて親近感が湧いた」と満足げに語った。宮里海音さん(18)は「小さいころから憧れていた。話を聞いて、警察官にも自衛官にも思っていた以上に幅広い職務があると知ることができてよかった」と話した。

 同地本は8日、那覇市内で沖縄刑務所とも初めての合同説明会を開催した。

 元自衛官や市民で構成する「ベテランズ・フォー・ピース・ジャパン」の井筒高雄代表は「自衛隊の志願者数は定員割れし、安保法制でさらに拍車が掛かっている」とみる。

 北朝鮮や中国を重視した「南西シフト」で、沖縄の自衛隊基地機能が強化される中での合同説明会に「現地採用を進めていきたい意図があると思う。警察官に合格できなかった人に、自衛隊へ入る道筋をつくりたいのではないか」と指摘した。