【台風10号】夏休み初日に直撃 農家、漁師「うんざり」


この記事を書いた人 Avatar photo 宮城 久緒
台風10号の本島接近で、漁船の台風対策に追われる漁師ら=20日午後2時26分ごろ、那覇市の泊漁港

 台風10号の直撃が予想される沖縄本島では、夏休み初日の21日に実施予定だったイベントが中止や延期となった。

 21日の始発からバスやモノレールの運休が決まり、船便や航空便の欠航が相次ぐなど県民の足への影響も広がる。

 台風接近を前にした20日、農作物への被害を防ぐためにカバーを掛ける農家や漁港に停泊する船をロープで固定する漁師ら台風対策に追われる姿が見られた。

 ほぼ毎週、接近する台風に、農家や漁師からは「うんざり」との声も上がる。

 市町村ごとに設置された避難所には高齢者らが訪れ、家屋への被害を心配しながら不安な夜を過ごした。

 南城市佐敷でキュウリをハウス栽培している當眞嗣顕さん(71)は「もううんざりだ」と疲れた表情を浮かべながら台風対策を進めた。

 防虫ネットを使ったハウスが吹き飛ばされないようにネットを外し、ハウスの天井近くまで高く育っているキュウリを倒して雨風よけのカバーを掛けた。

 「台風対策は2時間、過ぎ去った後にハウスを戻す作業は5時間かかる。これがもう今年3回目だ。勘弁してほしい」と語った。

 那覇沿岸漁港で20日朝から船を係留し、台風に備えていたマグロ漁師の男性(36)は「今年はよく台風が来るから、身構えている。(台風が接近すると)操業日数が減るから漁獲や値段に関わってくる」と懸念する。

 台風通過後の22日から漁に出る予定だが、「たくさん捕れて高く売れたらいいけどね」と挽回を願っていた。

 沖縄市知花に住む宮里米子さん(83)は「家は雨漏りもするし、風で揺れるから」と同市役所に避難した。

 同市高原に住む金城ヨシ子さん(86)も市役所に避難し「台風が来るたびに(市役所へ)逃げている。私は大丈夫だが、家が心配」と漏らした。

 数年前から台風接近の時には避難所で過ごすという宮里さんと金城さんは、顔を合わせる機会が増え、仲良くなった。

 「お互い名前も知らないし道で会うこともない。こうやってゆんたくするのが楽しみ」と顔を見合わせ、単身では不安な夜を2人で会話しながら過ごしていた。【琉球新報電子版】