豊かな調べ 節目彩る 八重山古典民謡箏曲保存会30周年 100人余が13演目


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幕開けで箏曲斉唱「赤馬節・鶴亀節」を披露する八重山古典民謡箏曲保存会の会員ら

 琉球新報新本社ビル落成記念「おきなわ文化の祭典 大琉球浪漫」シリーズの第5弾として、八重山古典民謡箏曲保存会創立30周年記念公演(同公演実行委員会主催、琉球新報社共催)が22日、那覇市の琉球新報ホールで開催された。会員100人余りが出演し13演目を披露した。叙情豊かな八重山古典民謡を優雅な箏の調べに乗せた。

 箏曲斉唱は幕開けの「赤馬節・鶴亀節」「鷲ぬ鳥節・目出度節」と「越城節・前ぬ渡節」「なんた浜」を演奏した。「なんた浜」は、5月に亡くなった大浜喜久名誉会長が作った伴奏譜を使用した。この楽譜は、箏が歌三線の伴奏にとどまることに満足せず、箏だけで演奏可能な楽譜を目指して作成したという。いずれの斉唱も、大浜の遺志を継ぐ会員が堂々とした歌と箏をホールに響かせ、会のさらなる発展を予感させた。

 秀風会本盛美奈子八重山民俗舞踊研究所の舞踊「綾蝶(胡蝶の唄)」は、八重山古典民謡箏曲保存会の島袋道子、知念千香子と那覇八重山古典民謡保存会が地謡を務めた。早調子で歌われる「胡蝶の唄」を、歌三線のリズムに合わせた躍動感ある箏の演奏で華やかにもり立てた。

 独唱では、上地尚子が八重山を代表する情歌「しょんかね節」を情感豊かに歌い上げた。一息の間に低音から高音、高音から低音へと変わる歌い出しを、声の高さはもちろん喉の絞りもそのままに安定した声量で聞かせた。玉城弘子は「仲筋ぬぬべーま節」、東江朝子は「月ぬまぷぃろーま節」を独唱し共に味わい深い歌で観客を魅了した。宮平のり子と具志堅道子による「あがろーざ節」、佐久本秀子と久手堅直子による「でんさ節」も披露された。

可憐な舞とテンポの良い曲で会場を華やかした舞踊「綾蝶」=22日、那覇市泉崎の琉球新報ホール

 箏曲は演奏時に下に置いた箏へ目をやることから、どうしても喉がつぶれがちになる。そのため独唱において、高音で苦しそうになったり、喉の絞りを抜いたりする場面があった。その中で上地は、聞かせどころで顔を少し上げるなどの工夫で巧みな歌を聞かせた。八重山古典民謡を美しく伴奏するだけでなく歌い継いできた会員たちの研さんの日々を垣間見た気がした。

 波平エミ子会長は「大浜名誉会長を思い、会員が一体となり今日を迎えた。最高の舞台になった」と目頭を押さえ、那覇八重山古典民謡保存会や八重山舞踊関係者らへの感謝を述べた。公演に先立ち30周年記念式典も行われた。
 (藤村謙吾)