真菌薬の開発期間短縮 千葉大・知花准教授が技術確立


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真菌を活用した新たな技術を確立した千葉大学真菌医学研究センターの知花博治准教授(同大学提供)

 千葉大学真菌医学研究センターの知花博治准教授(沖縄県読谷村出身)が、真菌の感染症に効く薬の開発期間を早める技術を確立した。人間に感染する真菌「カンジダ菌」を活用して、薬の開発に使う試薬が真菌のどの部分に効いているのかを確認する。試薬の効果を明らかにするのは通常、数年ほどかかるが、知花氏の技術を活用すれば、1週間程度まで短縮することができるという。知花氏は「副作用のない薬を短時間で生み出せる」としている。

 真菌は食品生産の過程などで活用されている一方で、人間に感染する「病原性真菌」も存在する。高齢化などによって免疫力が低下すると、真菌に感染して臓器の機能不全などを引き起こすこともある。真菌は人間と同じ真核生物で、真菌を撃退する薬を使った場合は人間の体も攻撃する可能性があるという。知花氏は「真菌に効く薬は副作用のリスクがあって製造が難しい」と説明する。

 知花氏は遺伝子の組み替えや操作を行い、約5千種類の遺伝子タイプを持つカンジダ菌を作り出した。遺伝子操作をした約5千種類のカンジダ菌に試薬を使うことで、菌のどの部分を攻撃しているかすぐに確認できるという。試薬が攻撃している場所が人間と真菌で共通している部分であれば、副作用が発生する可能性がある。真菌のみが持っている部分を試薬が攻撃していれば、副作用がない薬の開発につなげることができる。

 知花氏は「試薬が真菌のどの部分に効いているか確認するのは簡単ではなかった。約5千種類のカンジダ菌を使えば確認期間を短縮できて、副作用がないことを明らかにした上で製薬につなげることができる」と指摘する。9月にはベンチャー企業を設立して、技術を活用する。知花氏は「これから高齢化が進むことが予想されるので、真菌に効く薬の開発は重要となってくる。沖縄のためにも技術を役立てたい」と強調した。