沖縄美ら島財団(本部町)は、強い甘みが特徴のパイナップル品種「ゴールドバレル」の苗を短期間で大量に増やす「メリクロン増殖」技術を開発した。パイン苗を増やすには長い時間が必要で、新品種が一般に普及するには10年近くかかる。技術を使うことで優れた新品種を早く農家に普及することができ、農業振興につながると期待されている。
キクやイチゴなど苗が増えやすい植物と異なり、パインの苗は増殖に時間がかかる。通常、1株のパインから年間10~15株の苗が取れるが、メリクロン増殖技術を使うと10株を2年間で約1万株ほどに増やすことができる。
沖縄のパインは、全国一の生産量を誇り、県内の果樹でも主要な品目だ。県は新品種の開発に力を入れ、海外から品種も導入されてきたが、苗が増えにくいために普及が進まなかった。
ゴールドバレルのメリクロン増殖技術は、美ら島財団の総合研究センター植物研究室の佐藤裕之研究員が開発した。パインなどの熱帯果樹には、眠った状態の芽が多くあり、調整した栄養成分で芽を覚まして成長を促した。芽を入れるフラスコ内は、パインの苗だけが増殖できる条件をつくる。佐藤研究員は「カビを生やさないように『無菌化』した環境で、パインの苗だけを増殖させなければならない」と難しさを説明する。
さらに栄養に恵まれたフラスコから外部に出す際に、苗を外の空気に慣れさせる「順化」も技術研究のポイントだ。芽を取って4~5年で収穫でき、2016年度には財団関連会社の沖縄美ら島ファームで収穫が始まった。
佐藤研究員は「今後もパインの新品種に応用できる技術。より早く農家に普及し、農業や地域産業の振興に貢献できれば」と語った。