知事選 来月前倒し オール沖縄 対応に焦り 政権“弔い合戦”警戒


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 膵(すい)臓がんの切除手術を受け、療養しながら公務を続けてきた翁長雄志知事が死去した。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対を続けたシンボル的存在。11月予定だった知事選は9月中に前倒しされる見通し。再選出馬を期待してきた移設反対派は言葉を失い、対応に焦りを募らせる。対抗馬の選考を済ませ準備が先行する政権側は「弔い合戦」で県民感情が高まるとみて警戒を強めた。

時間的猶予

 「ショックだ。どうしていいか分からない」。知事与党の県議の一人は8日、言葉を詰まらせた。翁長氏を支援する政党、団体などでつくる「オール沖縄会議」関係者は「候補者擁立に向けた対応を協議しないといけない」と頭を抱えた。

 オール沖縄会議は、翁長氏の再選出馬を見据え準備を進めてきただけに、一から対応を迫られる形になった。翁長氏の任期満了を前提に11月18日投開票の日程が決まっていた知事選は前倒しされ、移設反対派にとって時間的な猶予は限られる。

県民感情

 後継候補の一人と目される謝花喜一郎副知事は8日夕に記者会見し、翁長氏が意識混濁だとした上で、自身が知事の職務代理に就いたと明らかにした。2度目の夜の会見で後継について問われると「私は聞いていない」と述べるにとどめた。

 知事選を巡り自民党は、翁長氏が4月、膵臓に腫瘍が見つかったと公表したのを踏まえ、対立候補の選考を急いできた。7月上旬には宜野湾市の佐喜真淳市長に出馬を要請。佐喜真氏は同30日に受諾した。県内経済界の関係者らの支援も得て、選挙への準備を着々と進めている。

 翁長氏の死去に伴う選挙日程の前倒しにも「こちらは準備ができている」(自民党幹部)と、情勢に影響はないと表向きは強調する。翁長氏が当選した2014年11月以降、対決構図となった8市長選で政権側は、支援候補が7勝1敗。巻き返しを図ってきた。

 だが今回の知事選は、移設反対の運動を主導してきた翁長氏の後継を決める選挙の色合いを強めるのは確実だ。首相周辺は「『翁長氏の遺志を無駄にしてはならない』という県民感情が盛り上がるのは間違いない。相当、厳しい戦いになる」と予測する。

 普天間の辺野古移設を巡っては、沖縄防衛局が早ければ17日にも辺野古沖に土砂を投入する方針を県に通知。政府関係者は「移設方針に変わりはない。投入時期は県の出方を見て判断する」と話した。

 翁長氏は土砂投入の動きに対抗し7月下旬、前知事が決定した埋め立て承認の条件に違反しているとして、承認を撤回する方向で手続きを始めると表明していた。

 県は9日、承認撤回に向けて防衛局に対する聴聞を実施する。政府も予定通り担当者を出席させる考えだ。

 埋め立て承認撤回は、土砂投入前に翁長氏が正式に決定するかどうかが焦点だったが、翁長氏は撤回時期について明言していなかった。

 謝花氏は会見で「職務代理の権限は、地方自治体の長の職務権限全てに及ぶ」として、翁長氏に代わって撤回を決めることは可能だと説明した。

 自民党の閣僚経験者は「民意を得ていない副知事が本当に撤回を決められるのか」とけん制した。