興南15安打 初戦突破 夏の甲子園第5日


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 【甲子園取材班】第100回全国高校野球選手権第5日は9日、兵庫県西宮市の甲子園球場で1回戦4試合を行い、県代表の興南は第4試合で土浦日大(茨城)と対戦し、6―2で勝ち初戦を突破した。興南は五回、下位打線の連打などでつくった無死満塁のチャンスで、1番根路銘太希の犠飛で先制、さらに1死二、三塁から2番仲村匠平が左前適時打で2点目を挙げた。六回は1死三塁から7番西里颯が前進守備の一、二塁間を抜き3点目。八回には途中出場の當山尚志の適時打と根路銘の犠飛、3番勝連大稀の適時打で貴重な追加点を奪った。守っては六回に失策が重なり内野ゴロで1点を失ったものの、先発の藤木琉悠が粘りの投球で最少失点でしのいだ。八回、無死満塁のピンチを招いた場面で左翼を守っていた宮城大弥にスイッチ。宮城は三振と併殺打で得点を許さなかった。九回に本塁打を浴びたが、最後は三振で締めた。興南の2回戦は15日(大会第11日)の第2試合で敦賀気比(福井)―木更津総合(東千葉)=10日第1試合=の勝者と対戦する。このほか横浜(南神奈川)創志学園(岡山)下関国際(山口)が2回戦に進出した。

◆左腕継投 強打封じる/藤木、頭脳的投球さえる

変化球を主体とした投球で、土浦日大打線を7回1失点に抑える好投を見せた藤木琉悠投手=9日、阪神甲子園球場(又吉康秀撮影)

 先発の藤木琉悠の粘投で相手の強力打線を抑えながら、打線が安打をつなぎ、途中出場の選手も適時打を放つ。先制、突き放し、ダメ押しと効果的に加点。終盤の危機の連続には藤木に加え、継投した宮城大弥が力強いストレートで抑え切る。「相手打線をかわすため藤木を先発する」「うちの打線に上位も下位もなく、誰がラッキーボーイになるか分からない」。試合前に我喜屋優監督がそう語った野球を、ナイン全員で表現した快勝だった。

 速球派左腕・宮城大弥対策をしていた土浦日大に対し、緩い変化球を内外に投げ分ける藤木の頭脳的ピッチングがさえた。空振りや凡打を誘い、相手打線を勢いに乗せず、「先発してゲームをつくることができた点は去年より成長した」と藤木は手応えありの表情で振り返った。

 投手戦が続く中、先発の好投に先に応えたのが興南だった。五回、1年の7番西里颯の中前打と8番里魁斗の内野安打、藤木のバントに相手守備の失策がつながり無死満塁。リードオフマン根路銘太希の犠飛で均衡を破った。そこに、「練習で全ての不安を置いてきた」とする主将仲村匠平が「考えすぎないスイング」で適時打を決める。球場に指笛が響き渡る中、興南が主導権を握り始めた。

 六回は守備の失策が続いて1点を失うが、その裏に即座に1点を加えた。七回には疲労で変化球が浮き始めた藤木が2死満塁を乗り切った。

 八回は無死満塁とこの試合最大の危機に。ここで宮城大弥が登板した。「(初戦敗退した)去年の恐ろしさを断ち切る」力みなぎる速球で三振と投ゴロ併殺で打ち取った。

 逆境を乗り越えた勢いそのまま、八回裏には途中出場の當山尚志の二塁打を含め4本の安打を集め、ダメを押した。

 打線が活躍するまで粘った藤木、危機を乗り越えた宮城。指揮官は「藤木は素晴らしいピッチングだった。宮城も最高の舞台で最高の経験をしたと思う」と自慢の左腕2投手のこの1年の成長を喜んだ。
 (嘉陽拓也)

◆宮城「全部三振に取る」/八回無死満塁完璧リリーフ

8回途中からリリーフ、本塁打を打たれるも4三振を奪う投球を見せた宮城大弥投手(又吉康秀撮影)

 3―1の興南優勢で進んだ八回、先発した藤木琉悠は疲労もあり、無死満塁の危機を迎える。最大の勝負どころ。我喜屋優監督は「難しい決断だったが、タイミングを逃すと悔いが残る」と、左翼を守っていた2年生左腕宮城大弥をマウンドに送り込んだ。

 「藤木さんが抑えてくれていたので自分が流れを持っていく。そして、全部三振を取りにいく」。待ちに待ったマウンドに立った宮城は初球から全力全開。自慢の速球で三振と併殺に打ち取ると、一塁側の応援席だけでなく、観客席全体が宮城の好投にうなった。

 昨年の初戦、智弁和歌山戦に先発し、6点差を覆された。この経験から「マウンドに立つ怖さもあった」が、この1年の努力で自信を取り戻した。先発投手は逃したが試合開始前から指揮官の目の前で投球練習しアピール。さらに、試合ではまず打撃で二塁打2本を放ち、四回には左翼奥の打球を好捕するなど、攻守で存在感を発揮した。

 八回に継投した場面は「危機を抑えることが目標だった」と頼もしく、昨年の嫌なイメージを自らで拭い去った。九回にソロ本塁打を許したが「あれは自分がスライダーを要求したから」と捕手の遠矢大雅がぽつり。小学時代からバッテリーを組む仲間だが、宮城は「そこから遠矢に首を振り続けました」と笑いながら振り返った。

 野手として活躍する場面もあったが「外野はそんなに好きじゃない。投手の自分が抑え、チームに流れを持ってきたい」と語り、昨年の悔しさを晴らせた活躍に胸を張った。
 (嘉陽拓也)