記事の表記、違いを討議 琉大院生 基地題材に模擬授業 中学2年生向けに想定


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「基地問題を伝える『ことば』について考える」をテーマにした模擬授業で発表する大学院生=7月31日、西原町の琉球大学

 琉球大学大学院教育学研究科に所属する金城睦さんら大学院生3人が7月31日、西原町の同大で「基地問題を伝える『ことば』について考える」をテーマに新聞記事を活用した模擬授業を実施した。他の院生と教員計17人が参加した。金城さんらは2016年12月13日に名護市東沿岸で起きたオスプレイの「事故」を伝える県内外の5社の記事を提示。「事故」を表す言葉は新聞社によって「墜落」「不時着」「浅瀬で大破」などと異なっている。院生らは書きぶりから印象の違いを討議。その上で、それぞれ見出し案を考えた。

 授業案をつくったのは大学院生の金城睦さんと小林倫子さん、黄〓翔(ファンユーシャン)さん。生徒が伝える立場になった場合、言葉の使い方を自覚的に考える力を培ってもらうことが狙い。中学2年生向けで、国語と社会科を合わせた学びを想定した。

 「事故」を起こしたオスプレイは米軍普天間飛行場所属。機体は大破し、プロペラや胴体が折れた。

 教材に活用したのは琉球新報、沖縄タイムス、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の記事。金城さんらは「事故」に対する公的機関の見解について県知事の「墜落と認識」、防衛省の「名護市沖に不時着水」、在日米海兵隊の「不時着」を挙げ、公式発表の違いも指摘した。

当日の教材として用いた新聞5社の記事

 記事や公的機関の見解を読み込み、院生の一人が考えた見出しは「オスプレイ不時着、機体大破」。「米軍の発表は不時着だが、住民は機体は大破したと言っている。双方の視点を盛り込んだ」と話した。別の院生は「オスプレイ墜落がもたらす住民の不安」を提案し「住民側からすると明らかに墜落だ」と続けた。

 今回の授業を発案した金城さんは高校の国語教諭。泊高校で教べんを執りながら大学院で学んでいる。金城さんは「同じ出来事でも立ち位置や見方によって書き方が違うことを学んでほしい。書き手の意図を想像して」と力を込めた。復帰運動を表す言葉を一例に挙げ「本土復帰、祖国復帰、日本復帰などの言い方があるが、それぞれに込められた意味は違う」と述べた。

 黄さんは「学校では対話的・主体的な深い学びが求められており、教科書の枠を飛び超えた授業が必要になるだろう」、小林さんは「多様な物の見方、考え方があることを伝えたかった」と授業の狙いを話した。

※注:黄〓翔の「黄」は旧字体
※注:〓は「日」の下に「立」