〈解説〉沖縄県知事選 玉城氏出馬 辺野古の是非 前面に 政権との対決姿勢も強調


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多くの支持者の前で県知事選への出馬を正式表明した玉城デニー氏=29日午後、那覇市大道の沖縄ホテル

 知事選投開票まで1カ月に迫る中、衆院議員の玉城デニー氏が出馬を表明した。会見では、辺野古の新基地建設阻止を掲げた「翁長雄志知事の遺志」を前面に打ち出し、翁長氏の「後継」として、新基地建設の是非を最大の争点に掲げる考えを示した。

 翁長氏があいさつをする際によく話していた「はいさい、ぐすーよー、ちゅーうがなびら」で会見を始めた玉城氏のそばには、金秀グループ会長の呉屋守将氏と翁長氏の次男で那覇市議の雄治氏が座った。机には、翁長氏の遺品である帽子が置かれた。翁長氏が構築した「オール沖縄」体制の一体感を演出するとともに、会見場は、急逝した翁長氏の弔い合戦の様相も呈していた。

 玉城氏は、翁長氏が多用していた「イデオロギーよりアイデンティティー」を掲げる考えを示し、自身の政治家としての立ち位置を「保守中道」と述べた。4年前の知事選と同様に幅広い層を取り込みたいとの思惑もにじむ。さらに、基地建設を進める政府が「分断」を持ち込んでいると語り、政権との対決姿勢を鮮明にし、政府との「対話」を掲げる相手候補を暗に批判した。

 玉城陣営は4年前の枠組みを踏襲し、政党には推薦願いを出さず、県民党的立場で選挙戦を展開する考えだ。ただ、出馬表明に至る中で、所属する自由党の小沢一郎共同代表の県内行脚の様子や国政野党幹部に支援を要請する場面が繰り返し報道されたことで、陣営からは「中央政党の露出が増えるほど有権者は離れる」と警戒する声もある。

 金秀グループと共に翁長知事を支えたかりゆしグループが自主投票を決めるなど、「オール沖縄」の枠組みは変化している。翁長氏不在の中、腹六分、八分で結集した「オール沖縄」勢力がどれだけ結束できるか、未知数な要素もある。 (吉田健一)