給与過払い解明遠く 発覚から1年半 是正案で議論足踏み 南部水道企業団


この記事を書いた人 大森 茂夫
不適切な給与の引き上げがあった原因が不明なまま時間が過ぎていく南部水道企業団=8月30日、八重瀬町の南部水道企業団

 【南部】一部の職員に対し不適切な給与引き上げをしていた沖縄県の南部水道企業団で、昨年2月の本紙報道で問題が明らかになってから1年半がたった今も、問題の根本的な原因が解明できていない状態が続いている。体制立て直しを掲げて新たな企業長が就任して1年以上が経過したが、いまだに給与の過払い額を公表せず、再発防止策もまとまっていない。企業団側が原因や再発防止策の議論を棚上げし、給与是正案にこだわり、原因に関する議論が進んでいないためだ。

 8月30日、南部水道企業団議会の定例会が八重瀬町の同企業団で開かれた。企業団の議員は八重瀬と南風原の町議が務める。この日は給与問題を追及してきた議員の改選前最後の定例会だったが、給与問題に関する報告はなかった。

 南部水道企業団は昨年4月、労組と理事の承認を得た給与是正を実施している。組合や企業団側によると、この際、飛び級や辞令なし昇級などの不適切な給与は是正された。

 一方で企業団側は、給与是正に加えて過去に労使間で結ばれた協約についても破棄する内容の給与案を提案する。労組側は「求めていたのは飛び級などの不適切昇給の是正で、労使協約を破棄する根拠がない」と反対しており、交渉は今年3月に決裂した。これまで、給与是正案の議論に終始し、不適切な昇給が起きた原因の解明は進んでいない。

 仲栄真弘実企業長は琉球新報の取材に対し、「まずは給与の是正が先だと考えている。過払い額や未払い額は計算上は出ているが、理事への説明段階でまだ公表できない」と説明する。再発防止策については「両町の給与担当者との勉強会などを開催したい。(一連の問題について)最終報告書をできるだけ早くまとめる」と述べたが、報告書の完成時期は明言しなかった。

 不適切な昇級問題の議論が進まないことについて、識者は「そもそもなぜこの問題が起きたのかを究明・説明することが必要だ」と指摘している。

 ■南部水道企業団の給与問題

 八重瀬町と南風原町の水道事業を担う一部事務組合の南部水道企業団で、2000年以降、一部の職員に対し給与規則を超えた昇給「飛び級」や、辞令なし昇給などの不適切な給与が支払われていた。両町の副町長や総務課長らでつくるアドバイザー会議が問題を調査し、不適切な昇給は認めたが「恣意(しい)的な意図などは確認できなかった」と結論付けた。一連の問題が起きた経緯と責任の所在は不明確なままとなっている。