玉城デニー氏 ちむぐくる 政治に <駆ける 2018知事選>


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支持者の声援に応えながら、遊説先へ駆け付ける玉城デニー候補=13日、那覇市内

 知事選告示日の13日、玉城デニー氏(58)は母親の故郷の伊江島で出発式に臨んだ。青空にそびえ立つ城山の駐車場で「みんなで手を取り合いながら生まれてくる命を大切に育んでいく。生まれる前から差別など存在しない。本当の沖縄のちむぐくるを政治で実行したい」と貧困対策や経済政策を訴えた。

 伊江島出身の母と米海兵隊員の父との間に旧与那城村で生まれ、母子家庭で育った。学校が休みの時には親戚のいる伊江島で牛の世話や草刈りをして過ごした。今も年に何度も通い、仏壇や御嶽に手を合わせ、自らの原点を確認する。伊江島での出発式は、翁長雄志知事の後継として「イデオロギーよりアイデンティティー」の理念を継ぐ玉城氏たっての強い希望だった。

 伊江島は、激しい地上戦を経験し、戦後米統治下で米軍基地の土地接収にあらがい、県民を挙げた「島ぐるみ闘争」の源流の場所でもある。出発式後、記者団に対し「戦後をどう振り返り、総括するかということは、未来を考える上で欠かせない」と語った。辺野古新基地建設が進む現状と島の歴史を重ね、建設阻止への決意を新たにした。

 玉城氏は、社会福祉専門学校を卒業しラジオパーソナリティーを経て政治の道に進んだ。沖縄市議会議員を経て2009年に衆院議員に初当選。4年前の知事選で辺野古新基地建設阻止を掲げた翁長氏を応援。同年の衆院選では「オール沖縄」から推薦を受けて当選した。それでも知事選への出馬は想定外だった。翁長氏からの後継指名には驚いたが、「翁長知事のあらゆる意思を引き継ぎたい」と出馬を決意した。議員経験が政策実現への自信につながっている。ラジオで培った表現力と、持ち前の軽いフットワークを生かし日夜、街頭を駆け回る。

 (’18知事選取材班)

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