ウルトラマン 脚本裏の苦悩 「金城哲夫伝」公演


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「光の国から僕らのために―金城哲夫伝」の一場面。齊藤尊史さん演じる金城哲夫さん(中央)と、桜井明美さん演じる妻の裕子さん(右)、ピグモン(左)=21日、南風原町立中央公民館

 【南風原】「ウルトラマン」シリーズの脚本を手掛けた故金城哲夫さん(1938~76年)の半生を描いた劇団民芸による演劇「光の国から僕らのために―金城哲夫伝」(作・畑澤聖悟、演出・丹野郁弓)の沖縄縦断公演が21日、哲夫さんの実家のある南風原町の町立中央公民館黄金ホールから始まった。沖縄と本土の懸け橋になろうと願った哲夫さんの苦悩と希望が描かれる。

 町が特別招待した南風原中と南星中の2年生、南風原高校の郷土文化コースの生徒約500人が、地元の「ヒーロー」の半生を見つめた。

 舞台は、哲夫さんと共に脚本を書いた上原正三さんとの対話を中心に進む。円谷プロダクションでウルトラマンをつくり上げ、69年に沖縄に戻った哲夫さんは、沖縄国際海洋博覧会の演出の仕事に取りかかる。経済的利益を求める本土の担当者と反発する県民の板挟みになりながらも「ヤマトゥもウチナーも一つになれる」と必死に交渉した。

 海洋博が開催された本部町の住民に「おまえはヤマトゥンチュか、ウチナーンチュか」と問われると「両方だ」と答えた哲夫さん。哲夫さんの半生を通して、基地に翻弄(ほんろう)され続ける沖縄の苦悩を浮かび上がらせる作品に、会場からは大きな拍手が上がった。

 南星中の神谷仁唯夏(にいな)さん(14)は「海洋博で沖縄の人と本土の人を頑張ってまとめようとしていたんだなと知り、心に残った」と話した。

 22日と23日は南風原町立中央公民館で上演され、24日から10月1日まで沖縄市やうるま市、国立劇場おきなわ、名護市などで上演される。詳しくは劇団民芸ホームページで。