普天間返還巡り応酬 候補者紙上討論 沖縄県知事選


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 琉球新報社は30日投開票の知事選に立候補した無所属新人で前宜野湾市長の佐喜真淳氏(54)と無所属新人で前衆院議員の玉城デニー氏(58)の2氏にインタビューし、重視する政策などを聞いた。
 (’18知事選取材班)

<佐喜真氏インタビュー>国と対立 県民望まず

13日の出陣式で支持を訴える佐喜真淳氏=那覇市牧志のいとみね会館前

 ―翁長県政の評価は。

 「翁長雄志知事が沖縄の過重な基地負担を全国に知らしめたことは高く評価する。一方、この4年間で国との関係で争いが絶えなかったが、これは県民が望むものだったのか。振興予算は500億円も減り、大型MICE施設や那覇軍港の移設などは止まったままだ」

 ―出馬を決めた理由と最も重視する政策は。

 「宜野湾市長として、市民の悲願だった普天間飛行場の早期返還を何としても実現したいと考えていたが、それができず忸怩(じくじ)たる思いがある。これを何としても実現したい。そのために知事となり、政府に強く求めていくしかないと考え出馬を決意した」

 ―普天間飛行場の辺野古移設の是非と県による埋め立て承認撤回の評価は。

 「先日の県による撤回が法令に照らして、そうするだけの根拠があってなされたのであれば、撤回は当然だと考える。現在、国が精査の上、必要な法的措置を取ることを表明しているので、今後の国の対応や司法の判断を見守る」

 ―普天間飛行場の危険性除去の具体的な手法は。

 「返還合意から20年以上がたつが、この間も宜野湾市内では事件事故が絶えない。返還は一日も早く実現すべきだ。私は政府と対等の立場に立ち、必ず実現する。返還に先立ちオスプレイの飛行停止を強く求め、返還に向けた準備に早期に着手する」

 ―辺野古新基地建設工事への対応は。

 「県が撤回に踏み切ったことで、現地での工事は現在、中断している。小野寺五典防衛相は、撤回の理由を精査の上、必要な法的措置を取ることを表明している。今後の国の対応や司法の判断を見守るべきだ」

 ―2021年度に期限が切れる沖縄振興特別措置法と沖縄振興計画について。

 「5次にわたる振興計画によって一定の社会資本整備が進められ、沖縄の経済成長の基盤が整えられた。今後も振興計画は必要であり、政府に強く働き掛けていく。ただ、これまでと同様のものでいいのか県民の間で議論を重ねるべきだ」

 ―自立型経済の構築に向けた経済振興の在り方は。

 「大胆な産業経済発展戦略により、企業の経営体質の強靱(きょうじん)化を図る。賃金の大幅アップや正規雇用率の改善を実現させる。若者の離職率が高いことから、きめ細かなマッチングや起業支援、職業教育などの総合的な雇用政策も推進する」

玉城氏から質問―辺野古容認なのか
日米政府が移設推進
 

 玉城氏 先日の公開討論会で私が、衆議院予算委員会の公聴会で「日米両政府は辺野古が唯一としている。それを否定できない」と述べていることを指摘したら、あなたは「われわれの努力には限界がある」と述べた。辺野古を容認しているとしか考えられない。

 佐喜真氏 私は一貫して地域住民の我慢は限界であり、普天間飛行場の返還は待ったなしと主張している。ご指摘の発言は、日米両政府が現行の移設計画を推進しているという事実を指摘したにすぎない。私は政府と対立するのではなく、交渉によって問題を解決する。

 玉城氏 宜野湾市長選では、5年以内の運用停止を明確に選挙公約に掲げていたが、今回の選挙公約には明記していない。米軍機の墜落と部品落下事故が頻発し、一刻も早い運用停止が必要なときに、期限を守らせると言わないのか。

 佐喜真氏 5年以内の運用停止は、私と仲井真弘多前知事が求め、政府から「できることは全てやる」との回答を得たものの、翁長県政下では負担軽減協議会が長期に開催されず、進んでいない。私は政府と厳しく交渉し、運用停止を実現させる。

<玉城氏インタビュー>名護に背負わせない

琉球新報社のインタビューに答える玉城デニー氏=22日、那覇市古島の選挙事務所

 ―翁長県政の評価は。

 「高く評価する。翁長雄志知事は国の圧力に屈せず辺野古新基地建設阻止に全力を尽くした。過重な基地負担を全国知事会に訴え、新基地建設反対の世論は全国に浸透した。完全失業率も改善、有効求人倍率も復帰後初の1倍超を達成。子どもの貧困対策も全国に先駆けて調査し官民挙げての取り組みが格段に広がった」

 ―出馬を決めた理由と最も重視する政策は。

 「翁長知事は生前、わたしに期待を寄せていたとうかがった。翁長知事に協力した方々から後押しがあり出馬を決めた。最大の争点は普天間飛行場の閉鎖・撤去、危険性の除去、辺野古新基地建設の断念だ。アジアのダイナミズムを取り入れた経済振興に取り組み、子どもの貧困対策、産業創出や人材育成を図る」

 ―普天間飛行場の辺野古移設の是非と、県による埋め立て承認撤回の評価は。

 「宜野湾市民が受ける基地被害の苦しみを名護市民に背負わせることはできない。翁長知事の遺志を継ぎ、新基地建設を阻止するために全力を尽くす。承認撤回を全面的に支持する。撤回は公有水面埋立法に基づき適正に判断したものだ」

 ―普天間飛行場の危険性除去の具体的な手法は。

 「SACO合意が結ばれた当時と計画の中身が変更され、新たに活断層や軟弱地盤が発覚した。地盤の調査が進められると20年近く費やすことも考えられる。普天間の訓練を県外、国外に移すことが必要で、閉鎖・返還に向けた協議をすべきだ。政府は一日も早い危険性除去が原点と言うなら約束を守るべきだ」

 ―辺野古新基地建設工事への対応は。

 「法律に基づく県の適正な判断に従うのは当然のことだ。国が法的措置を取ったとしても県の立場を堂々と主張していく。司法は誤った判断をしてはいけない。知事権限を行使して新基地を阻止していく」

 ―2021年度に期限が切れる沖縄振興特別措置法と沖縄振興計画について。

 「市場が認める高い発展可能性を顕在化させる新たな沖縄振興計画を策定する。補助金頼みではない、アジアのダイナミズムを取り入れ、それらを原資に自立型経済を構築する」

 ―自立型経済の構築に向けた経済振興の在り方は。

 「観光リゾート産業や情報通信関連産業のさらなる発展を図る。沖縄のソフトパワーや優位性を発揮し、世界から投資を呼び込む」

佐喜真氏から質問―辺野古の阻止法は
あらゆる権限を行使

 

 佐喜真氏 玉城候補は県民を深く失望させた民主党政権の一員だった。どうやって「(普天間飛行場の)最低でも県外」を実現させるつもりだったのか。知事を目指す玉城候補は今、辺野古移設をどうやって阻止するのか。同じことを繰り返すだけではないのか。

 玉城氏 民主党政権が約束を果たせなかったのは大変残念。ただ私自身はぶれたことはない。県内移設断念、オスプレイ配備撤回の建白書実現に全力を尽くしてきた。翁長知事の遺志を継ぎ、あらゆる権限を行使し辺野古新基地建設を阻止するため全力を尽くす。

 佐喜真氏 自衛隊の先島配備についての考えは。8月31日まで県防衛協会の顧問を務めていたが、玉城氏を支援する「オール沖縄」には、先島配備に反対する政党もある。安全保障について定見を持たないようでは、沖縄の将来を託すことはできないのでは。

 玉城氏 オール沖縄は立場の違いを超えて建白書実現の一点で結集した。意見の違いがあるのは当然。自衛隊配備には安保や地域振興、住民生活への影響でさまざまな意見がある。十分説明を尽くし、住民生活の安全・安心に配慮するのは国の最低限の責務だ。

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 琉球新報社は30日投開票の知事選に立候補した佐喜真淳氏にもインタビューを申し入れましたが、自民党県連から、多忙により日程調整が困難で取材は受けられないとの返答があったため書面での回答を掲載しています。