「米吉オジーに感謝」新垣さんが絵本に 父の戦死で親代わり


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 【宜野湾】地域や小中学校で、30年近く読み聞かせ活動を続けてきた新垣英子さん(76)=市普天間=が、祖父・知念米吉さん(故人)の思い出を絵本にまとめ、刊行した。読み聞かせで新垣さんの思い出話を聞き、気に入った児童から「新垣おばあちゃん、その話を絵本にしてよ」との声があり、作品化した。新垣さんは沖縄戦で父を亡くしており、絵本には父親代わりだった祖父への感謝も込めている。

絵本「米吉オジーとセメンター牛」の表紙絵

 タイトルは「米吉オジーとセメンター牛」。新垣さんが幼い頃、本部町の家で飼っていた牛と米吉さんの絆を描いた。農業を手伝っていた「セメンター牛」は肌の色がセメント色だったため、そう呼んでいた。米吉さんと祖母・ツルさん(故人)は必死で働きながら、沖縄戦で父を亡くした新垣さんら4人きょうだいの孫を育てたという。

 絵本化は昨年5月、新垣さんが長年読み聞かせ活動を続ける普天間小6年の女児にお願いされた。

 新垣さんは「オジーへの恩返しにもなる」と一念発起。2週間でストーリーを書き上げ、絵は孫の仲地輝(きらら)さん(12)=同小6年=が担当した。

友人や親族から花束を贈られる新垣英子さん(中央)と孫の輝さん(左)=8月31日、宜野湾市野嵩のジュビランス

 本は市内の小中学校と市立図書館に70冊を寄贈した。

 8月31日に市野嵩の総合結婚式場「ジュビランス」で開かれた出版記念パーティーで、知念春美市教育長は「絵本では祖父と牛の絆が描かれ、教育的示唆に富んでいる。子どもたちには絵本から多くのことを学んでほしい」語った。

 孫の輝さんは「私が読んで、いろんな人にこの絵本を知ってもらいたい」とあいさつ。新垣さんは「親は子どものために一生懸命だということを忘れないで。勉強も大事だけど、心も大事だよということを感じてほしい」と話した。