子どもの居場所 運営ボランティア頼み 持続へ行政支援要望 [県都を歩く ’18那覇市長選]上


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「子どもの居場所」での、ボランティアの女性たちによる料理の準備作業=6日、那覇市内

 那覇市長選の告示日まで残り8日となった今月6日、沖縄県那覇市内の「子どもの居場所」を訪ねた。所狭しと並んだ漫画本や遊具、部屋の奥で子どもたち数人がテレビゲームを楽しんでいた。この日は月に2回の炊き出しの日。ボランティアで集まった地域の女性たちが、沖縄そばを作り、子どもたちが遊ぶ様子を見守った。

 「おっ、久しぶりだね」。夕方、友達と連れだって居場所に訪れた女児に、責任者の男性が声を掛けた。ここでのルールはまず手を洗うこと。女児は手を洗い終えるとそばをすすった。

 内閣府の「沖縄子どもの貧困緊急対策事業」で始まった「子どもの居場所」事業は、県内全域で広がり、那覇市内には6月1日現在で22カ所が設置されている。この居場所も責任者の男性が立ち上げ、支援を続けてきた。

 助成金は食料費など月10万円程度。月2回、ボランティアが手の込んだ料理を振る舞う。男性は仕事をしながら運営を続けており、普段食事として出せるのは、カレーうどんやラーメン、揚げ物など簡単な物に限られるという。

 居場所は多い日には25~30人が訪れる。子どもたちの家庭環境はさまざまで、男性によると、飛行機に乗ったことがない子、回転寿司に行ったことがない子も多い。おでんや鍋物を食べたことがない子もおり、冬場は積極的に提供する。

 スペースが狭く、潤沢な予算がない中、運営には地域の協力が不可欠だ。男性は行政に対し「子どもたちのために、地域が動いていることをもっと考えてほしい」と要望する。居場所を支える地域のボランティアについて、「次世代にバトンタッチできるのか。全部ボランティアでは、正直無理ではないかとも感じている」と打ち明けた。

 内閣府は既存事業の「子どもの居場所」について、補助率を段階的に見直し、19年度は18年度までの10割から9割に減らす方針だ。一方、手厚い支援が必要な子どもへの対応や、小規模離島の課題に対応する新規事業を盛り込むことも検討している。子どもの居場所を運営するためには、市の負担が生じるほか、目配せも求められる。

 男性は次期市長に「地域のボランティアに時給700円でもいいから出せないのか。地域に根差している人の貢献をもっと評価し、居場所を持続させる環境づくりを進めてほしい」と語る。生活困窮家庭の子どもたちのために、那覇市独自の政策をどう打ち出すのか。立候補予定者の訴えを注視する。

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 10月21日に那覇市長選が投開票される。「子どもの居場所」や商店街、一人暮らしの高齢者など那覇市内を歩き、市民の声を聞いた。

 (’18那覇市長選取材班)