社会

いじめ自殺 豊見城市を提訴 小4両親が賠償請求

記者会見する父親と弁護士=12日午後、県庁記者クラブ

 2015年10月に豊見城市内の小学4年生(当時)の男児がいじめ自殺した問題で、学校側がいじめの実態を認識しながら適切な対策を怠り、自殺を防げなかったなどとして、男児の両親が12日、市やいじめた児童の保護者ら5人を相手に約7800万円の損害賠償を求める訴訟を那覇地裁に起こした。

 提訴後に県庁で会見した男児の父親は「学校が適切な対処をすれば命を落とすことはなかった。市教育長はいじめについて謝罪したが、学校の対応についての謝罪はなかった。学校側の責任を問い、再発防止につなげるためにも提訴することを決めた」と話した。

 市教育委員会は「訴状が届いていないのでコメントは控えたいが、提訴されたことは大変重く受け止めている」と述べた。宜保晴毅市長は「訴状の内容を確認してからコメントしたい」と述べるにとどめた。

 両親側は訴状で、男児が同級生からいじめを受け、担当教諭に助けを求めたほか、学校のアンケートで被害を訴えたにもかかわらず適切な対処をせずに放置したとして、いじめを防ぐための対策を怠った注意義務違反があると指摘した。

 さらに、学校や市教育委員会が「児童は両親から虐待されていた」などといった虚偽の情報を基に、自殺が発覚した後も法律で定められた調査を十分に実施しなかったことを問題視。いじめた児童の保護者のほか、虚偽事実を広めた関係者らも共同不法行為者として訴えている。

 市の教育委員会が設置した第三者委員会は今年3月、自殺の大きな要因の一つにいじめがあったと因果関係を認め、学校側が適切な対応を取っていれば、自殺を防げたと判断した。

〈解説〉学校独自の検証を 問われる意識改革

 同級生によるいじめが原因で自殺した豊見城市内の小4男児の両親が、市やいじめた児童の保護者らを相手に損害賠償を求めて提訴した。背景には、自殺といじめの因果関係が認定された後も、責任を回避するかのような姿勢を示す学校や市教育委員会側への不信感がある。

 市教委が設置した第三者委員会の報告書は、学校側がいじめ防止対策推進法の定めるいじめの定義を理解せず、不当に限定解釈し、早期発見を妨げたことで自殺を招いたと指摘。いじめに対する重大性の認識が欠如した学校側の問題を浮き彫りにした。

 男児の父親によると、現在までに市教委側から学校の対応についての謝罪はない。なぜ当時、助けを求めた男児の声に向き合わず、早期対応を図るに至らなかったのか、市教委や学校による原因究明に関する説明もないままだ。

 責任に向き合い、反省がなければ根本的な解決には程遠い。再発防止を図るためにも、市教委は第三者委の報告を「受け止める」だけで終わらず、独自の検証で原因を追究することが求められる。

 第三者委は事故後早期に調査に着手しなかった対応の不適切さも指摘し、「今回の失態を教訓に意識改革に努めよ」と要求した。学校や市教委側は提訴にどう対処するのか、いじめを防ぐ意識改革への在り方としても問われる。 (謝花史哲)