県知事選で初めて実施した「ファクトチェック」。それまで見過ごされてきたネット上の言説を事実でもって検証するという、地方紙としても新たな取り組みとなった

 「『偽』と断定するのは困難だったのでは」「検証体制は自社でできるのか」

 10月6日、都内に全国の新聞社の若手記者が集まった。新聞労連主催の記者研修会で、琉球新報が9月に不定期に掲載した企画記事「ファクトチェック」について質問が相次いだ。各地方紙で、ネット上での言説を検証したいとの要望が高まっているのを実感した。

 琉球新報は、9月30日に投開票された県知事選を巡る選挙報道で、ネット上のデマや中傷を検証する「ファクトチェック―フェイク監視」を初めて実施した。併せてツイッター(短文投稿サイト)上の膨大な書き込みの分析にも初めて挑戦した。

 ネット上の言説が投票行動に影響を与えてはいないか―。以前から記者の間では疑問が出ていた。影響の有無は判別しにくいが、うそが事実であるかのように広まっている現象は認識していた。だが、これまで記事化にまで踏み込んだことはなく、「ファクトチェック」はその反省もあって始まった。

 候補者のツイッターなどを閲覧する中で“沸騰”した言葉に注目し、通常の選挙取材と同時並行で検証した。ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)の特別プロジェクトにも参加した。

 記事化する上で留意したのは、事実に語らせて書くことだ。さらに、選挙期間中に記事を出すことも心掛けた。投票行動の判断材料にならないと意味がないと思ったからだ。

 課題も残した。言説の選定基準だ。今回はSNSを複数の目で監視する中で頻出する単語を選定した。その手法を後から検証できるように、監視ログ(記録)を残しておくなどの取り組みも必要だろう。

 今回は特定の候補者を利さないよう、匿名にして記事を書いた。一方でそのせいで記事が分かりにくくなった面もあった。選挙報道は候補者ごとに行数をそろえるなど公平性に留意する。だが、ニュース記事として報じる上ではその限りではないとの見解もあり、編集局内でも意見が分かれた。今後もファクトチェックを継続するためにも、属人的になり過ぎないシステムも検討すべきかもしれない。
 (滝本匠)