政治

現状打開の具体策示さず 玉城知事の所信表明 独自カラー打ち出すも基地問題は後退か

所信表明演説をする玉城デニー知事=16日午前、那覇市の県議会

<解説>

 玉城デニー知事が県議会への就任あいさつで示した県政運営の所信は、翁長雄志前知事が目指した「誇りある豊かさ」の実現を引き続き基本線としながら、自身の任期中に迎える日本復帰50年の節目を捉えた「新時代沖縄」の文言など独自色をちりばめ、新県政の前向きな展望を強調した。一方で、新基地建設阻止を県政運営の柱とした翁長前県政の発足時に比べ、基地問題への言及は後退した。

 好調な県経済の拡大で得た利益を、福祉や教育など県民生活の向上に注ぎ込む好循環へとつなげていく構想を示し、前県政では道半ばだった取り組みを発展・継承する決意を県民向けに発した。

 言葉の随所にうちなーぐちを用いて県民のアイデンティティーに訴え掛ける手法も翁長県政を踏襲する。ただ、政治や基地問題を巡る独自の歴史観を踏まえて中央政府の強硬姿勢に対峙(たいじ)した政治家の翁長氏と異なり、国際交流や環境などの施策にも光を当てることで「多様性」や「優しさ」という独自カラーも打ち出している。

 一方で、知事選で最大の争点となった米軍普天間飛行場の返還・移設問題については「建白書の精神に基づき、辺野古の新基地建設に反対し、普天間飛行場の一日も早い閉鎖・返還を政府に強く求める」という一文だけだった。

 翁長氏は4年前の就任あいさつで、知事選で公約した辺野古埋め立て承認の「取り消し」を検証するため、専門家組織の設置に言及した。今回の玉城知事のあいさつに、翁長氏が死去に際して決断した承認「撤回」に関する言及はなく、県と国が鋭く対立する現状を打開する具体的な方策についても示されなかった。

 翁長氏の遺志を引き継ぐ決意をあいさつ全体ににじませはしたが、国土面積の約0・6%の沖縄に約70%の米軍専用施設が存在することの不条理を国民世論に突き付けた翁長氏の主張は今回、姿を消した。

 基地の整理縮小や日米地位協定の抜本的見直しという基地負担軽減への言及も、従来の県政が取り組んできた以上の真新しさはなく、前向きさやソフト路線の中に基地問題を取り巻く厳しい現状が埋没する印象は拭えなかった。
 (与那嶺松一郎)