1本の脚でプレーするサッカーを知っていますか? 沖縄出身の日本代表キャプテン古城暁博が語るアンプティサッカーのおもしろさ


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ボールを奪い合う古城暁博(中央、日本アンプティサッカー協会提供)

 下肢切断などで障がいのある選手が杖を使い、1本の脚でプレーするアンプティサッカーで、沖縄県宮古島市出身の古城暁博(35)=AFCバンブルビー千葉所属=が日本代表の主将を担う。10代でシドニーパラリンピック陸上の日本代表を務めた。アンプティーサッカーは「装具を使うとはいえ、基本的な生身のしんどさや激しさに見応えがあり、面白い」と語り、沖縄でも多くの人に知ってほしいと願う。24カ国が参加するW杯メキシコ大会(24日開幕)に2大会連続で出場する。「ものすごく厳しい壁だが、達成は不可能ではない」と4強入りを掲げる。 (石井恭子)

 10年前に日本にこの競技を持ち込んだのが、ブラジル出身県系3世のエンヒッキ松茂良ジアスだ。今大会でも日本代表を務める。2020年の東京パラリンピック開催種目ではないが、古城も松茂良も、縁ある沖縄での関心の広がりに期待している。

 古城は平良中卒業後、千葉に移り住んだ。高1で偶然から始めた陸上で頭角を現す。100メートルなどで日本記録を更新し、高3でシドニーパラリンピックT42クラス100メートル8位に入賞。陸上引退後、5年前にアンプティサッカーと出合う。180センチ、86キロで日本のセンターバックを務める。

 5歳のとき、交通事故で右足のひざ下を切断。「歩くことすら考えられない」という状況から、古城の場合は「宮古島では、友達と遊ぶには自転車に乗らなきゃいけなかった」。「できない」ことを「やらなきゃならない」が上回った。

日本代表の古城暁博主将(後列中央)、エンヒッキ松茂良ジアス(同右から2人目)ら(日本アンプティサッカー協会提供)

 小3から義足でサッカーをした。「普通にやっても勝てないし、一番遅い」環境でも楽しかった。「ロボット」と言われもしたが、「あまり嫌な気持ちにならなかった」と周囲に恵まれたことに感謝する。むしろ「自分の『普通』が、他人の『違和感』と言われるのが煩わしかった」という。二本の足を使うサッカーとの一番の違いはプレーを「考えるようになったこと」だ。ターンは一瞬ではできず、1、2とふた呼吸を要する。時間がかかることで、相手のいないスペースをどこにどうつくるか、腐心する。両足があれば意識しない動作を「明確に言語化し、考える」必要があり、それが面白いという。

 海外チームには地雷で手足を失った選手もいて、「日本では考えられないような背景がある」競技だ。今回の日本代表には中高生2人がおり、年齢が若いほど足や腕を失った過去が近い。後輩に対しては「自分の姿勢で表すしかない。人前で平気で義足を外したり。足がなくたってたいしたことないって、感じてもらいたい」。多くの思いと才能を束ね、世界に挑む。海外遠征費用が高額のため、日本アンプティーサッカー協会ではクラウドファンディングで支援金を募集中だ。詳しくは同協会ホームページにて。

<用語>アンプティサッカー
 下肢に障がいのある選手がクラッチと呼ばれる杖をつき、義足を外して1本の足でボールを蹴り、上肢に障がいのある選手が1本の手でGKを務める。7人でプレー。日本国内には9チームあり、競技人口は約100人。W杯は2018メキシコ大会で11回目。日本は10年から出場し、最高は14年の16強。