情報乏しく捜査難航 名護・ひき逃げ1年 警察 協力呼び掛け


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事故現場を通行する車両に情報提供を呼び掛ける名護署の山田聡署長(右端)=26日、名護市の屋我地島

 【名護】名護市の屋我地島で今帰仁村古宇利在住の男性=当時79歳=がひき逃げされて死亡した事故は、未解決のまま26日で1年がたった。目撃や有力な手掛かりがなく、捜査は難航している。26日、名護署や県警交通指導課、名護地区交通安全協会の30人は事件現場で検問をしたり、現場周辺の集落を回ったりして、現場から逃走した車両に関する情報提供を呼び掛けるチラシを配布した。名護署は「どんなささいな情報でも寄せてほしい」と協力を訴えている。

 事故は昨年10月26日午後10時ごろ、屋我地島の県道110号で「人が路上に倒れ、血を流している」と通報があったことで発覚した。男性は病院に搬送されたが、死亡した。

 男性は現場近くの居酒屋で飲酒後、歩いて自宅まで帰る途中だった。捜査関係者によると、男性の体には車両の底部に接触したような跡があり、服にはタイヤ痕が残っていた。

 名護署の山田聡署長は遺族を訪ね、仏壇に手を合わせて犯人摘発を誓った。山田署長は「ひき逃げという悪質な犯罪は許さない。事件を風化させず、『絶対に被疑者を捕まえる』という強い意志を持って今後の捜査に取り組む」と強調した。

 事件に関する情報提供は名護署交通課(電話)0980(52)0110。

遺族「早く罪償って」

 【名護・今帰仁】事故発生以降、県警は周辺の集落での目撃証言や住民の車両を調べてきた。しかし、物的証拠は少なく、有力な目撃証言もない。1年たっても犯人が分からないことに、遺族たちは「早く安心したい。犯人には一日でも早く名乗り出てほしい」と訴えている。

 捜査が難航していることについて、捜査関係者は「周辺には防犯カメラも少ない」と説明。事故後に発生した台風の影響で、車両の特定につながる物的証拠が流された可能性も指摘する。

 ひき逃げで死亡した男性=当時79歳=は姉(81)と2人、故郷の古宇利島で暮らしていた。男性は長く浦添市内でシャッターなどを扱う会社を営んでいた。会社を閉じた後、故郷に戻った。島ではヤギを飼育し、野菜を育てていた。男性は酒をたしなみ、普段は穏やかな性格だった。

 今も弟の夢を見るという姉は「夢枕で『今までごめん、ありがとう』と言う」と語った。男性の息子(46)は「(犯人に)早く出頭して、罪を償ってほしい」と話した。