「沖縄県妨害」との印象操作 防衛相誤認発言 国、強引姿勢鮮明に


社会
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台風で破損したとみられる岸壁=11月2日、本部港塩川地区

<解説>
 沖縄県名護市辺野古沿岸部の埋め立てに使う土砂を搬出する港の使用ができないことを巡り、岩屋毅防衛相は2日の会見で「(本部町は)沖縄県から新たな申請は受けないようにと指導されている」と事実と異なる説明を行い、あたかも辺野古新基地建設に反対する県が妨害したかのような印象操作につながった。事実に基づかない「フェイク(偽)」情報のまん延が問題となる中で、行政の中立や公平性を求められる大臣自らが、政治的な思惑から事実をゆがめるという看過できない言動だ。

 米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に伴う埋め立てに関し、国の強引な姿勢が鮮明となっている。県が下した埋め立て承認撤回処分に対し、国の1機関である沖縄防衛局が“身内”の国土交通相に執行停止を申し立てて認められ、1日に早速、工事再開に向けた作業に着手した。埋め立てに使用する土砂を搬出するため、その日のうちに本部港塩川地区の岸壁使用許可も本部町に申請したが、町の方針で受理されなかった。

 港の使用許可を出す権限を移譲された町は、港の管理者である県と協議の上、台風被害で破損された岸壁は使用できず、残る岸壁では新規の受け入れが難しいと判断。既に新規受け入れを中止する方針を決めていた。県から町への「指導」はなく、その権限も有していない。町にも指導された認識はないのが実際の経緯だった。

 多くのメディアは岩屋防衛相の「指導」という言葉をうのみにし、その映像や文字起こしがテレビやインターネットを通じて全国に発信された。沖縄県がなりふり構わず建設阻止に動いていると印象付けられかねない。だが事実は違う。政府には法の順守や県への誠実な対応が求められる。
 (山口哲人)