生後0カ月0日の虐待死を防ぐには 「にんしんSOS東京」の妊娠相談の現場から


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「葛藤を感じやすい妊娠超初期からの支援が必要だ」と訴える「にんしんSOS東京」の中島かおり代表理事=1日、沖縄市民小劇場あしびなー

 「にんしんSOS東京」で妊娠にまつわる悩みの相談窓口で活動している中島かおり代表理事の講演会「どんなSOSにも寄り添いたい~誰にも言えない 妊娠相談の現場から~」(沖縄県主催)が1日、沖縄市民小劇場あしびなーで開かれた。市の職員や医療関係者など120人が参加した。中島代表理事は妊娠した女性やその家族が孤立しないように「相談者が抱えるものを捉えて寄り添ってほしい」と述べた。

 虐待死で最も多いのは「0カ月0日」の乳児で、そのほとんどは母子健康手帳が未交付だという。母子の支援は母子手帳交付の場から始まるが、子どもの養育について出産前から支援が必要な特定妊婦は交付の場に現れず、支援とつながることが難しい。中島代表理事は「虐待を予防するには『妊娠したかも…』と悩む時から支援とつながる仕組みが必要だ」と訴えた。

 「にんしんSOS東京」は、思いがけない妊娠をした女性とその関係者を対象とした継続的相談窓口と支援活動を行う。方法は無料通話やメール、SNSのメッセージがある。年々相談は増加しており、10代の相談者が全体の30%を占めている。15歳未満は思いがけない妊娠の相談、15歳以上は妊娠の不安や避妊の失敗の相談が多い。男性や性的マイノリティーの相談もあり、妊娠にまつわる悩みに対して性教育を含めた支援をしている。

市の職員や医療関係者が参加した「にんしんSOS東京」の中島かおり代表理事の講演会

 特定妊婦は、思いがけない妊娠や支援者不在、若年、経済的問題などの背景を抱えており、妊婦自身が要保護児童であることも多い。中島代表理事は、9月に沖縄市が開所した県助産師会母子未来センター内にある若年妊産婦の居場所を「先進的事例だ」と評価した。

 相談者の多くは身近な頼り先がなく社会との関わりが薄い人が多い傾向にある。中島代表理事によると、相談機関に出向いても窓口で断られ嫌な思いをしたり、秘密を守ってもらえるか心配したりと不信感を持っている人が多いという。

 一緒に悩んでくれたという経験から、次の支援につながるようにするためには「信頼関係を築くことが大切。先回りして情報を提供するのではなく、相談者が大切にしていることを捉えて一緒に考えてほしい」と訴えた。また出産後も安心して地域で暮らせるように「妊婦を見掛けたら『何カ月? 予定日はいつ?』とほほ笑み、声を掛けてほしい」と話した。

 うるま市から参加した医療関係者の東門麻里子さん(39)は「いいと思う支援を押し付けていたかもしれない。相談者の悩みや揺らぎに寄り添える伴走者になりたい」と話した。