私の個性、アートに輝く 野原さん、石川さんの作品 パリのアール・ブリュット展に


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力強い色使いで「顔」を制作した野原優子さん=6日、南城市大里の福祉作業所たんぽぽ・工芸舎

 パリ市立アル・サン・ピエール美術館で開催中の「アール・ブリュット・ジャポネ展II」(主催・東京都、アル・サン・ピエール美術館、愛成会)に、沖縄県内から南城市の野原優子さん(40)の絵画6点と浦添市の石川真治さん(39)の陶器15点が出品されている。約8年ぶり2回目の開催となる同展覧会には、日本各地から52人の作品約640点が展示されている。

 アール・ブリュット(生の芸術)は、美術の専門的な教育を受けていない人や障がいのある人が、伝統や流行に左右されることなく表現した芸術活動をいう。同展は2010年3月に、芸術を通した障がい者支援として第1回が開催された。12万人以上が訪れ、反響を呼んだ。

 展示作品は、14年に社会福祉法人愛成会(東京都)がアール・ブリュット作品を全国公募した際の応募作品などを中心に、アル・サン・ピエール美術館の関係者によって選ばれたという。

 南城市大里の福祉作業所たんぽぽ・工芸舎に通う野原さんの作品「顔」はクレヨンを使った力強い色使いが特徴的で、絵の中心に、大きな耳と目を持つ人の顔が描かれている。2000年ごろ、当時通っていた作業所の昼休みを利用し描き上げた。

文字をまとった「戦闘員」を制作した石川真治さん=6日、浦添市前田の社会就労センターわかたけ

 自閉症で知的障がいのある野原さんは、島尻特別支援学校に通っていた当時から、美術の授業で才能を開花させていたという。当時、同校で美術教諭を務めた八重瀬町の朝妻彰さん(69)は「色に力と密度があり衝撃を受けた。『顔』に描かれた開いた口は、歌っているようにも見え独創性が光る」と話す。

 自閉症の石川さんは、粘土を使い、「戦闘員」と名付けた陶器作品を出品した。ヘルメットをかぶった「戦闘員」の体には、石川さんの好きな映画や番組の名前が記されている。ヘルメットを取ると笑顔がのぞく工夫もこらす。

 浦添市前田の社会就労センターわかたけに通い、週1度の陶芸作業の時間で制作活動をする。1日に3体ほど作り上げているという。陶芸の指導も行う朝妻さんは「集中力が素晴らしい。手をてきぱき動かし、納得のいくまで作品作りを続けている」と評価する。

 2人の作品は、今月23日から名護市民会館で開催する「アール・ブリュットとの出会い展in名護」(アートキャンプ2001実行委員会、若竹福祉会主催)にも出品される。入場無料。26日まで。問い合わせは朝妻さん(電話)090(1943)8675。