ノロ殿内 保存の声も 那覇・末吉公園 研究者ら貴重性指摘


社会
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 那覇市の末吉公園内で発掘された近世期のものとみられる「ノロ殿内(どぅんち)」跡を、那覇市が公園整備のために撤去して記録保存にとどめようとしていることに対して、研究者らから保存を求める声が上がっている。

 沖縄国際大学の宮城弘樹講師(考古学)は「ノロ殿内がこれだけはっきりとした形を残して発掘された例は少ないのではないか。公園の一角にあるので、市民に見てもらえるよう石積みをそのまま残したらどうか」と話す。

 豊見山和行琉球大教授(歴史学)は「ノロの屋敷跡はよくあるが、近くに末吉宮もあり、歴史公園として残す方が公園としてもアピールできる。できれば復元して、当時の様子が分かるようにして残してほしい」と強調した。

 稲福みき子沖縄民俗学会会長は「ノロ殿内は特別な祭壇があり、一般の屋敷とは違う。王府のお膝元である首里地域のノロ殿内として貴重だ」と指摘。1週間前に現場を訪れた津波高志・同学会顧問は「正面から入って東側に『手水(ちょうず)』の跡らしきものがあり、西南側にはフールの跡らしきものがある。普通の民家と違ってかなり立派な造りがされている。近世のノロの状況を知るための貴重な資料であることは間違いない」と評価した。

 北中城村などのノロ殿内を長年調査してきた北中城村教育委員会の城間義勝さんは「敷地外側にある石畳の道はおそらく『神道』と呼ばれたものではないか。王府時代のノロの生活ぶりが分かり貴重だ。そのまま残して活用できれば」と保存を期待した。

 一方で、高良倉吉琉球大名誉教授(歴史学)は「県内でノロの屋敷がきれいに残っているところは他にもある」とし、赤嶺政信琉球大教授(民俗学)も「伝承があり、屋敷があることは分かっていた。保存するしないは地元の人たちがどう考えるかだ」と述べ、記録保存で十分との見解を示した。

《用語》ノロ殿内

 ノロは琉球王国時代の村落祭祀(さいし)をつかさどった神女で、王府から任命された。ノロ殿内は「ノロ火の神(ヒヌカン)」のあるほこらや建物に対する敬称。記録保存 埋蔵文化財が開発によって現状のまま保存できず失われてしまう場合に、その埋蔵文化財の調査結果を資料として残すこと。