新基地建設・辺野古区に個別補償せず 区民「納得いかない」 自民 「要望受け入れ、後々大変」


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辺野古区行政委員会の普天間代替施設等対策特別委員会に参加した沖縄防衛局の伊藤晋哉企画部長(右端)ら=13日午後4時過ぎ、名護市辺野古公民館前

 【名護】米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古への新基地建設で、地元の辺野古区が受け入れ条件として求める個別補償の問題が宙に浮いている。沖縄防衛局は8月、区に対し個別補償は「実施できない」と伝達。個別補償などについて区は自民党本部などに「直談判」を試みたが、期待した議論はできなかった。受け入れを明確にしていない渡具知武豊名護市長も補償に関して「市としてできることはない」との姿勢だ。政府は個別補償の代替策として再編交付金での地域振興を検討しているが、区の行政委員の一部からは「到底納得がいかない」との不満が漏れ、区が代替策を受け入れるか見通しは立っていない。

■市「関わらない」

 13日、辺野古区で開かれた区普天間代替施設等対策特別委員会。名護市の担当者は委員会の直前、補償問題について市は「関わらない」とし「オブザーバー」の立場を明確にした。市のある幹部は「個別補償に関しては、市としてできる範疇(はんちゅう)を超えている」と話す。再編交付金を活用したインフラ整備などは市が実施する考えだが、個別補償について「区と国の話」として捉え、市として関わらない姿勢だ。特別委員会に市は「招かれて参加した」とするが、国、市、辺野古の3者間の協議ではなく、市は補償の交渉に加わらない立場を貫く。

 区の関係者は10月末に非公式で上京し、個別補償実現を促すよう自民党本部で幹部との面談を求めた。しかし党サイドは「個別補償の話をするなら会うことはできない」とけん制、上京当日まで日程は白紙のままだった。あいさつの名目で二階俊博幹事長と面談できたが、踏み込んだ個別補償の議論はできなかった。

 党関係者によると、自民党内でも「辺野古の要望を受け入れたら後々大変になる」との見方が広がっている。米軍基地を抱える他の地域との整合性を保つためにも、個別補償は応じられないとの姿勢だ。ある防衛省関係者は個別補償について「できないものはできない。だが、何もしないと言っているわけじゃない」と強調した。

■募る不信

 移設問題が浮上した20年以上前から、国や市は区からの要望には前向きな姿勢を見せていた。今回の個別補償を巡る対応に、当時を知る区の60代男性は「(当時の)市長だけでなく、防衛事務次官や防衛庁長官など、いろんな人がこの地域に入って『地域振興は全てこの地域のために使う』などと言っていた。地域の要望は『100%でなく120%やる』と言っていたのは何だったのか」と不信感を募らせる。

 市は再編交付金を活用したインフラ整備などを念頭に置くが、地元からは「再編交付金は本来、新基地建設による影響が最も大きい東海岸地域に使うべきだ」との声が根強い。これまでも国からの直接交付金などで久辺三区には“箱物”が整備されてきたが「辺野古にはもう土地がない」(区の関係者)と、世帯への補償を求める声が大きい。

 区内からは、受け入れの前提条件が崩れたとして「移設問題は白紙に戻した方がいい」「新基地はいらない。目を覚まさないとだめだ」との反発の一方、工事が強行される中で「国が決めることであり、区としてはどうしようもできない」と、諦めの声も聞こえる。臨時の区民総会を求める声も根強く、今後の区の判断が注目される。 (阪口彩子、明真南斗)