亡き同僚へ 鎮魂の読経 元警官の我那覇住職 2警官銃殺28年


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慰霊碑の除幕式で読経する我那覇瑞英さん=23日、沖縄署

 1990年11月の暴力団抗争のさなかに沖縄市で起きた2人の警察官銃殺事件の発生から28年となった23日、沖縄署の敷地内に慰霊碑が建立され、その除幕式が催された。式には遺族や警察官、OBら約320人が参列し2人の冥福を祈った。碑に入魂し、焼香の際に読経をしたのは、元警察官で退職後に高野山宝壽院の住職となった我那覇瑞英さん(71)=読谷村=だ。殉職警察官が亡くなる直前に沖縄署で会話をした我那覇さんは「助けられなかったことが心残り。仕事だから『行くな』とは言えない。2人はたまたま殺された」と無念そうに話した。

暴力団抗争に巻き込まれて殉職した2人の警察官に向けた慰霊碑を除幕する県警関係者ら

 銃殺されたのは、当時私服で捜査車両に乗務し、暴力団抗争の遊撃警戒に当たっていた警部=当時(43)=と警部補=当時(42)。2人が黒いセダンタイプの車で乗り付けた場所は、暴力団の隠れアジト近くで、対立組織の組員と間違えられて銃撃された。

 我那覇さんは、警部補が任官したころの指導役だった。事件当時は県警捜査2課内にあった暴力団対策室(現組織犯罪対策課)で勤務しており、沖縄署に立ち寄った際、これから警戒に出るという警部補に会った。2人が乗る車両が暴力団が使用する車種と似ていることから「気をつけろよ」と声を掛けたが、別れた10分後、2人が凶弾に倒れたことを知った。

 我那覇さんは58歳で退職し、「人の役に立ちたい」と思い家族の反対を押し切って仏門に入った。殉職した後輩の供養を自ら行うことも動機の一つだ。慰霊碑の建立式典の実施を聞いた時は率先して供養を買って出た。「朝、読経する時には『あの世で頑張っているか』と声を掛けている。碑が建立できて本当に良かった」と2人の安らかな眠りを願った。

 慰霊碑は事件の風化を防ぐ目的で、県警友会と暴力団追放県民会議が寄付を募って20日に建立した。出席した遺族は「碑まで建立してくれてありがたい」と感謝した。

 慰霊碑建立期成会長を務めた警友会の日高清晴会長は「尊い犠牲を深く心に刻み、今後の供養として語り継ぎ決して忘れない。この碑が暴力団との対決意識を醸成する糧として末永く追悼されることを願っている」と式辞を述べた。(梅田正覚)