若き三線職人、祖父と二人三脚 島唯一の製作所、独自デザインで特別賞 離島フェア


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宮古木工芸の与儀昌樹代表(右)と祖父の栄功氏さん。特別賞の「沖縄三線 與儀栄功型」を手に

 「まだ見ぬ島の魅力!島の時感!再発見」をテーマに、離島フェア2018(主催・同実行委員会)が23日から那覇市奥武山町の沖縄セルラーパーク那覇で始まった。今年で30回目を迎えたフェアでは各地の特産品約980品の展示販売や11市町村16店の離島食堂などがあり、多くの来場者でにぎわっている。展示即売では各地の産品を使って創意工夫された商品も。最終日の25日は午後6時半まで開催される。

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 若き三線職人が祖父と共に作り上げた「沖縄三線 與儀栄功型」が、離島フェア2018の特別賞に選ばれた。製作したのは宮古木工芸(宮古島市)の与儀昌樹代表(28)と、創業者で祖父の栄功さん(83)だ。木工芸の技術を生かし、製材から三線の完成までを一貫して手掛ける。伝統的な形を守りつつ、材質や機能性を工夫して新たな三線の魅力を高めようと製作を続け、棹(さお)の先に当たる「天」と付け根の「鳩胸」の形を大胆に変えたデザインが高く評価された。

 宮古木工芸は島で唯一の三線製作所で、島の木材を活用して家具や三線を製作、販売する。原木の仕入れから三線販売まで全ての工程を手掛けるのが特徴だ。現在は三線の型を栄功さんが考案し、磨きや塗装、皮張り作業は昌樹代表と2人で分担している。

 「一つのことを極めたい」と話す昌樹代表。16歳で三線製作を習い始めた。高校の授業が終わると毎日、工場に通い詰め、栄功さんから三線作りを学んだ。「祖父が身近にいて、製作機材もある。これ以上の環境はなく、おやじは別の仕事なので自分がやろうと思った」と決意を語る。

 栄功さんは強い創作意欲を持ち、1999年の「組み立て式三線」など離島フェアで特別賞を受けるのは、今回で5回目。4本の弦で、上3本なら二揚げ、下3本なら本調子など、調弦せずに演奏できる三線など、独創的な発想で三線の幅を広げる。2010年には森や山に関わる技術を有する達人として「森の名手・名人」に選定されている。栄功さんは「伝統は守り、いろんなものを作って人を楽しませたい。すでに持っている人も、もう一つ欲しくなる三線を作りたい」と笑顔で語る。

 今月7日、三線は国の伝統的工芸品に指定された。だが、三線職人は若い世代でも40代を超え、後継者の育成が課題となる。昌樹代表は「県内の三線職人は自分が最年少だと思う。良いものを作って利益を上げ、みんなが憧れる職業にできれば、後継者は自然と増えるはずだ」と意気込む。栄功さんも「もし技術を習いたい人がいたら歓迎したい」と話した。(大橋弘基)